菅首相、1分に1回以上口にする「ある口癖」 言葉が心に届かず不安にさせる理由とは
1月7日、首相官邸、1都3県へ緊急事態宣言の再発令について記者会見する菅首相 REUTERS
首都圏1都3県を対象にした緊急事態宣言の再発令が決まった。コロナ対策で後手後手の感がぬぐえない菅政権への批判が出るのは必至だ。コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏は「菅義偉首相は1月4日の約30分の会見内で39回も、語尾に『思います』『思っています』とつけた。自信のなさや責任逃れの印象を与え、人々の絶望感や不安を増幅している」と指摘する----。
30分間の会見内で語尾に39回も「思います」とつけた
コロナ禍の拡大で、菅政権に批判が集中している。すべてが政治の責任というわけでもなく、誰が手綱を握っても難しい局面だ。しかし、この未曽有の危機下でわが国のリーダーの「伝える力」のお粗末さが、人々の絶望感や不安を掻き立てている。
ここで、単なる政権批判をするつもりはない。筆者は、これまで経営者や政治家など世界のリーダーのコミュニケーション術やスキルを研究し続けてきた。そんな「コミュバカ」の視点から、いくつか話し方の提言をしたい。これはリーダーのみならず、誰でもすぐに実行できるテクニックだ。
1月4日、わずか30分ほどの年頭の会見で、菅義偉首相が39回も繰り返した言葉がある。それは、「思います」「思っています」だ。
まず、スピーチの部分では、
・改めてコロナ対策の強化を図っていきたいと思います。
・不要不急の外出などは控えていただきたいと思います。
・国民の皆様と共に、この危機を乗り越えていきたいと思います。
・皆さんに安心と希望をお届けしたいと思います。
・その年が新たな成長に向かう転機となった変革の年であった、こう言われる年にしたいと思います。
数えると、17回。しかも、記者との質疑応答の中では、さらにそのペースが加速し、22回。ひとつの答えに7回も「思います」が使われているケースもあった。
「やってみるけど、できなかったら勘弁してね」というニュアンス
英語で言えば、I thinkと言い続けたということだろう。I think=私が思いますには......、I believe=私が信じているのは......と言った時点で、それは、「ファクト」=事実ではなく、単なる私見=「オピニオン」となってしまう。私見はエビデンスをもって実証できない。
この「思います」は、日本人がよく使う表現で、筆者がコーチングする企業のエグゼクティブの中でも、気が付かないうちに多用する人は少なくないが、ここまで頻繁に使う例はあまりない。
「強化を図ります」「控えてください」「危機を乗り越えます」「希望をお届けします」「こう言われる年にします」と短く強く言い切ればいいだけのことなのに、ついついワンクッション置いてしまう。癖なのかワザとなのかはわからない。聞く側は、丁寧さ・謙虚さを感じることもあるが、一方で、自信のなさ・責任逃れという印象をもつこともある。
「やりぬきます!」ではなく、「やりぬきたいと思います」では、真剣度が全く違う。前者は覚悟で、後者は「一応、やってみるけど、できなかったら勘弁してね」というニュアンスだ。