「新しい刺激」に飢えた、若き表現者・村上虹郎。
自分にとって心地のいい環境では、新しい自分に出会えない。
──まったく着地点が見えない状態で、お互いが表現をぶつけ合う形ですね。なぜあえて計画的な要素を排除するのでしょうか?
村上: それはやっぱり、見たことがないものを見たいから。根本的に、新しい感覚とか、新しい世界に飛び込みたいという欲求が常にあります。そういう意味でいうと、毎回違う脚本で、毎回違う役を演じることができる役者は、僕にとっては最高の生き方だと思います。ただ、それは自分の行為としては新しいことではなかったりします。自分にとって心地のよい場所で、馴染みの人とばかり触れ合っていても、新しい自分には出会えないと思うんです。自分のフィールドの外にいる人と出会うことで、「あんたってここが全然足りてないね」とか、「ここがすごいよね」とか、客観的な意見に触れることができます。心地のよい自分の場所と、外の世界。そのどちらもすごく重要で、バランスが大事だなって、最近特に思います。
──映画以外にも、写真や、アートや、音楽など、幅広い分野に興味を広げているイメージですが、その裏にはやはり、新しい刺激を求める欲求がありそうですね。一度ハマったら、かなり深掘りしていくタイプですか?
村上: 全然違います(笑)。なんでも最初のインパクトが好きだから、興味の矛先は次から次へと移っていきます。たとえば写真にハマっていたときは、毎日カメラを持ち歩いて、なにを撮っても楽しくて仕方がなかったけど、しばらくすると、最初の衝動は薄れてしまいます。カメラというものは、自分と他者の間にある一つのコミュニケーションツールとも捉えられますが、僕は次第に、なにも武器を持たず、もっと直感的にコミュニケーションを取りたいと思うようになりました。なんでもただ無闇に深堀りしても意味がないので、自分に必要なものを見極めて、適切な距離感を保って向き合う感じですね。