韓国キム・ギドク監督、コロナで死去 世界三大映画祭受賞の巨匠とセクハラ醜聞、本当の姿は?
新型コロナウイルスによる合併症により12月11日ラトビアで客死したキム・ギドク監督。写真は第69回ヴェネツィア国際映画祭で『嘆きのピエタ』が最高賞である金獅子賞を受賞したときのもの。REUTERS/Tony Gentile
<人間の本質に切り込む異才の死を世界が悼んだ。だが母国の映画人の多くは沈黙している......>
昨今、日本では芸能人が不祥事を起こしてしまった場合、本人の活動自粛以外に、出演作品の放送や上映をどうするのかが話題になる。
「作品と演者は切り離して考えるべき」という意見と「責任を取って表舞台には出すべきではない」「被害者の心境を考えると、目につく要因は排除すべき」という意見に分かれ論議されている。
先週11日、ある映画監督の訃報が流れた。彼の死は、作られた作品と作った本人のスキャンダルを切り離すか否かについて、再度考えさせられるものとなった。その監督とはキム・ギドク。韓国映画に興味がある人ならば、彼の名を知らない人はいないだろう。
欧州から高い評価を得た韓国唯一の監督
1996年『鰐〜ワニ〜』で監督デビューした。その後、2000年・2001年と連続してヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に作品招待され、世界から注目を集める。
その後、彼は世界三大映画祭であるカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭で受賞した韓国唯一の監督となった。
韓国内でも2003年に発表した『春夏秋冬そして春』は、韓国2大映画賞である青龍賞と大鐘賞で作品賞を受賞している。さらに2005年には『うつせみ』が国際映画批評家連盟賞年間最優秀賞を獲得した。
この輝かしい受賞歴をみると、一体どんな巨匠監督なのかと思ってしまうが、その作品はかなりアバンギャルドだ。
韓国では受け入れられず
人々はキム・ギドクの名前の枕詞に、よく「鬼才」という単語をつける。人間のダークな部分を生々しく描く作風で、痛々しく、表現が過激過ぎるため、韓国内の観客からはあまり受け入れられていない。実際、『悪い男』(70万人動員)、金獅子賞受賞作『嘆きのピエタ』(58万人動員)以外は、韓国内で興行的には失敗している。
筆者が学生として通っていたソウル芸術大学に、キム・ギドク監督は映画学科作品担当教授としてやってきた。授業中、よく絵画の勉強のため単身パリにわたったときの貧乏話や、初監督で映画について何も知らず、スタッフに馬鹿にされたことに腹を立て、結局自分ですべてやってしまった話などをしてくれた。