韓国、コロナ禍の釜山国際映画祭 オンラインで国境越え観客も交流、新たな道示す
オンラインならではの舞台挨拶を実現
今回の釜山映画祭で、特に海外から評価が高かったのが舞台挨拶である。他の映画祭と同様、オンラインでの舞台挨拶を中心に行われたが、釜山では監督や出演者との質疑応答をネットからオープンチャットでも質問を受け付けた。
通常は、映画館の会場でスタッフがマイクを渡し観客が質問するが、今回のようなチャットでの質問なら大勢の人の前で緊張しながら発言する必要もなく、気軽に質問できるため、映画への意見や質問がたくさん飛び交ったという。
さらに画期的だったのは、ベトナムやタイなど、制作された国の劇場と同時に上映を開始し、終了後には両国の観客がオンラインで一緒に舞台挨拶に参加できるという取り組みだ。国境を越えた釜山映画祭として各国の映画祭チームで話題となった。
今年は、舞台挨拶が135回行われ、そのうちオンラインが90回。実際にゲストが釜山を訪れステージ上で行われたものが45回だったそうだ。今回のオンライン舞台挨拶の成功は、今後コロナが収まっても取り入れられ、世界中の観客と作り手とをつなぐシステムになるかもしれない。
また、映画祭中に行われるフォーラムについても、ユーチューブを利用したオンラインで行われた。観客からの質問は、舞台挨拶同様チャットから可能にしたことで、手軽さからオフライン開催時よりも多くの質問が寄せられ、トークも盛り上がったという。開催後1週間オンライン上で見ることが可能にした点も好評だったそうだ。
フィルムマーケットも前年以上の参加社
さて、冒頭にも書いた通り、釜山映画祭のフィルムマーケットは、アジア映画を売り買いする映画関係者にとっては来年以降公開する作品の買い付けに重要な市場である。釜山は今年、他の映画祭フィルムマーケットと同様にオンライン開催を発表していた。
しかし、オンライン形式のフィルムマーケットは、各国のバイヤーやセラーからは不評なのだ。確かにオンライン会議なら今どきどの会社も行っており、わざわざマーケット登録費を払ってまで参加する意味があまりないというのが本音である。
釜山映画祭のマーケットではどうなるかと思いきや、意外にも去年より参加社が増えて、20カ国205社が参加し成功的に終わったという。
細かい改善部分はあったものの、オンラインとオフラインを上手に使った映画祭が出来上がった。また、将来コロナが収束しても、今後の映画祭にも生かせるアイディアがたくさん生まれた点は、さすがである。