最新記事

映画

韓国、コロナ禍の釜山国際映画祭 オンラインで国境越え観客も交流、新たな道示す

2020年11月6日(金)11時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

オンラインならではの舞台挨拶を実現

今回の釜山映画祭で、特に海外から評価が高かったのが舞台挨拶である。他の映画祭と同様、オンラインでの舞台挨拶を中心に行われたが、釜山では監督や出演者との質疑応答をネットからオープンチャットでも質問を受け付けた。

通常は、映画館の会場でスタッフがマイクを渡し観客が質問するが、今回のようなチャットでの質問なら大勢の人の前で緊張しながら発言する必要もなく、気軽に質問できるため、映画への意見や質問がたくさん飛び交ったという。

さらに画期的だったのは、ベトナムやタイなど、制作された国の劇場と同時に上映を開始し、終了後には両国の観客がオンラインで一緒に舞台挨拶に参加できるという取り組みだ。国境を越えた釜山映画祭として各国の映画祭チームで話題となった。

今年は、舞台挨拶が135回行われ、そのうちオンラインが90回。実際にゲストが釜山を訪れステージ上で行われたものが45回だったそうだ。今回のオンライン舞台挨拶の成功は、今後コロナが収まっても取り入れられ、世界中の観客と作り手とをつなぐシステムになるかもしれない。

また、映画祭中に行われるフォーラムについても、ユーチューブを利用したオンラインで行われた。観客からの質問は、舞台挨拶同様チャットから可能にしたことで、手軽さからオフライン開催時よりも多くの質問が寄せられ、トークも盛り上がったという。開催後1週間オンライン上で見ることが可能にした点も好評だったそうだ。

フィルムマーケットも前年以上の参加社

さて、冒頭にも書いた通り、釜山映画祭のフィルムマーケットは、アジア映画を売り買いする映画関係者にとっては来年以降公開する作品の買い付けに重要な市場である。釜山は今年、他の映画祭フィルムマーケットと同様にオンライン開催を発表していた。

しかし、オンライン形式のフィルムマーケットは、各国のバイヤーやセラーからは不評なのだ。確かにオンライン会議なら今どきどの会社も行っており、わざわざマーケット登録費を払ってまで参加する意味があまりないというのが本音である。

釜山映画祭のマーケットではどうなるかと思いきや、意外にも去年より参加社が増えて、20カ国205社が参加し成功的に終わったという。

細かい改善部分はあったものの、オンラインとオフラインを上手に使った映画祭が出来上がった。また、将来コロナが収束しても、今後の映画祭にも生かせるアイディアがたくさん生まれた点は、さすがである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中