コロナ禍で快進撃続くネットフリックス それを支える翻訳業界の裏側とは?
民主化運動が「暴動」に......
一方で、ネットフリックスの誤字脱字や誤訳などの問題も深刻だ。膨大な数の字幕作業をこなさなくてはならないのは理解できるが、簡単な漢字の間違いや、打ち間違いなのか突然アルファベットが1文字だけ入っているような初歩的なミスがあるとそちらが気になって話が入ってこないことがある。
また、字幕だけでなく作品紹介のページでも誤訳が波紋を広げることがある。その代表的な例が、韓国映画『タクシー運転手~約束は海を越えて~』である。この映画の作品紹介ページで、市民による民主化運動を「暴動」と表現し、日韓の映画ファンから非難される騒ぎがあった。
問題のページはネットフリックスジャパンによって既に修正済みだが、このような作品自体を揺るがしかねない単語のチョイスをしていると、そのうちAIに字幕作業も取って代わられる時代が来るかもしれない。
将来にはAIが翻訳を担当?
現にネイバーではコロナで自宅学習が増えたことから、教育用映像にAIによる自動翻訳字幕・吹替機能を無料で提供するサービスが始まっている。また、ネットフリックスで配信中の韓国ドラマ『人間レッスン』では、携帯の音声機能で仲間に指示を出すシーンが多く登場するが、この音声機能の声は、生身の声優の音声ではなく、AI声優がキャスティングされているという。
全世界でエンターテイメント業界が意気消沈している中、少しでも好景気な業界が存在するのはこれからの望みとなる。OTT会社が潤えば世界中のクリエーターにもまた多額の制作費が回り世界各国の若手制作陣にチャンスが巡っていく。
さらに、国内作品全体の質や技術の向上も期待されている。世界配信されるため、技術面でも今までの水準をぐっと上げていかなくてはならない。現に韓国では世界水準のCG技術を目指し始めた結果、たった3名の職員で設立した特殊CG効果会社ウェストワールドはネットフリックス作品を手掛けることで、1年半の間に130名の社員を抱える会社に急成長した。
コロナウイルスの感染拡大で暗いニュースが大半を占めるなか、このようにOTTの好景気から潤いを見せる業界も存在する。このチャンスを掴み、より素晴らしい作品を世界中に届けてくれるようにこれからも期待したい。