最新記事

エンターテインメント

コロナ禍で快進撃続くネットフリックス それを支える翻訳業界の裏側とは?

2020年7月24日(金)19時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

民主化運動が「暴動」に......

一方で、ネットフリックスの誤字脱字や誤訳などの問題も深刻だ。膨大な数の字幕作業をこなさなくてはならないのは理解できるが、簡単な漢字の間違いや、打ち間違いなのか突然アルファベットが1文字だけ入っているような初歩的なミスがあるとそちらが気になって話が入ってこないことがある。

また、字幕だけでなく作品紹介のページでも誤訳が波紋を広げることがある。その代表的な例が、韓国映画『タクシー運転手~約束は海を越えて~』である。この映画の作品紹介ページで、市民による民主化運動を「暴動」と表現し、日韓の映画ファンから非難される騒ぎがあった。

問題のページはネットフリックスジャパンによって既に修正済みだが、このような作品自体を揺るがしかねない単語のチョイスをしていると、そのうちAIに字幕作業も取って代わられる時代が来るかもしれない。

将来にはAIが翻訳を担当?

現にネイバーではコロナで自宅学習が増えたことから、教育用映像にAIによる自動翻訳字幕・吹替機能を無料で提供するサービスが始まっている。また、ネットフリックスで配信中の韓国ドラマ『人間レッスン』では、携帯の音声機能で仲間に指示を出すシーンが多く登場するが、この音声機能の声は、生身の声優の音声ではなく、AI声優がキャスティングされているという。

全世界でエンターテイメント業界が意気消沈している中、少しでも好景気な業界が存在するのはこれからの望みとなる。OTT会社が潤えば世界中のクリエーターにもまた多額の制作費が回り世界各国の若手制作陣にチャンスが巡っていく。

さらに、国内作品全体の質や技術の向上も期待されている。世界配信されるため、技術面でも今までの水準をぐっと上げていかなくてはならない。現に韓国では世界水準のCG技術を目指し始めた結果、たった3名の職員で設立した特殊CG効果会社ウェストワールドはネットフリックス作品を手掛けることで、1年半の間に130名の社員を抱える会社に急成長した。

コロナウイルスの感染拡大で暗いニュースが大半を占めるなか、このようにOTTの好景気から潤いを見せる業界も存在する。このチャンスを掴み、より素晴らしい作品を世界中に届けてくれるようにこれからも期待したい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中