最新記事

映画俳優

アイスマンが振り返る『トップガン』の熱い日々

Val Kilmer Reveals All!

2020年5月22日(金)16時10分
ケリー・ウィン(ジャーナリスト)

2011年9月のトロント国際映画祭に出席したときのバル・キルマー Fred Thornhill-REUTERS

<作品への思い、監督の情熱、仲間との絆...... 不朽の名作の撮影秘話をバル・キルマーがたっぷりと>

俳優バル・キルマーの代表作と言えば、1986年の映画『トップガン』だろう。数々の出演作(『トゥームストーン』『ウィロー』『バットマン フォーエヴァー』など)の中でも特に大きな位置を占める作品だ。当然、4月に出版された本人の回顧録『アイム・ユア・ハックルベリー』にも、当時の撮影秘話が登場する。

永遠にノスタルジーをかき立てる大ヒット作(テーマ曲「愛は吐息のように」を聞けば誰でもぐっとくるはず)だが、何とキルマーは当初まるで興味がなかったとか。そんな衝撃の告白をはじめ、回顧録には興味深い話や笑える話、気になる話題が満載だ。そのあらましを紹介しよう。

渋々オーディションへ

キルマー自身は『トップガン』のオーディションにも出演にも全く興味がなかった。「とにかく片っ端からハリウッドの人気映画監督に会え」とエージェントに言われ、仕方なく受けたら主人公のライバルの「アイスマン」役に一発で合格。これには参った。やりたくなかった。

監督のトニー・スコットはキルマーの落胆を見抜いたようで、次のように声を掛けたという。「脚本は確かにまだまだだが、これから良くなる。まずはジェット機を見てくれ。ぐっとくるはずだ」

監督の熱い思い

キルマーによれば、スコットは『トップガン』のセットとコンセプトに子供のようにはしゃいでいた。キルマーをアイスマン役に決めた直後、人であふれ返る廊下でジェット機の音をまねたほどだ。

撮影現場でも、スコットの情熱は際立っていた。「トニーは撮影プロセスを愛し、現場のエネルギーを愛し、登場人物たちを愛していた。全てがトニーの活力源だった」と、キルマーは書いている。「ジェット機が飛び立つたびに、トニーは大興奮だった。こっちが投げやりにセリフを言っても、飛び上がらんばかりに喜んだ」

オフには悪ノリも

撮影のない日は羽目を外した。あるとき、泥酔した仲間を乗せて車を走らせていて、四差路交差点に差し掛かった(信号は全て赤)。交差点の中心部に入り、完全な円を描いて猛スピードでスピンした瞬間、パトカーに出くわした。『トップガン』というクールな映画の撮影に遅刻しそうで、と釈明すると、警官は違反切符を切らずに通してくれた。

主演のトム・クルーズは仲間に加わらなかった。演技に専念したかったのだろうと、キルマーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中