ハリウッドとエンタメ業界を直撃した最悪のコロナ危機
The Hit to Hollywood
アナリストの一部には、映画の興行収入が100億ドル落ち込むという見方もある。この数字は全世界の年間予想総収入の4分の1に相当する。
「どんな影響が出るのか、まだ読めない」と、ある映画業界の大物は言う。「前代未聞の出来事だ。(自宅で楽しむ)ホームエンターテインメントは堅調かもしれないが、製作ペースの減速で作品不足が問題になりそうだ」
投資顧問会社CFRAの業界アナリスト、トゥナ・アモビはこう指摘する。「エンターテインメント企業のダメージを定量化することはほぼ不可能だ。まだ早過ぎる」
話題作が軒並み公開延期
「映画館やテーマパークが最もダメージを受けやすい」と、アモビは言う。「とてつもなく大きな影響が出る。中国への依存度が最も大きい企業は、香港と上海にテーマパークを展開しているディズニーだ」
同社はライブイベントやクルーズ事業でも新型コロナウイルスの影響が甚大で、株価は年初来で3割以上下落。投資顧問会社コーエンのアナリスト、グレゴリー・ウィリアムズは、テーマパークは業績回復まで何年もかかるとして、NBCユニバーサルのテーマパーク部門の今年度の予想利益を31%、21年度は27%、22年度は24%引き下げた。
それでも映画ビジネスの場合、他人との接触が危険でなくなれば急反騰が期待できると、証券会社ウェドブッシュ・セキュリティーズのマイケル・パクターは言う。「テーマパークやライブイベントと違い、映画のスケジュール延期は容易だ」
既に公開延期になった話題作は、ユニバーサルの『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(今年5月から来年4月に延期)、MGMの『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(7カ月先延ばしで今年11月に)など。マーベルの『ブラック・ウィドウ』は5月公開予定だったが、無期延期になった。
ディズニーの『リトル・マーメイド』『ピーター・パン』『ホーム・アローン』、ユニバーサルの『ジュラシック・ワールド/ドミニオン』など、一時的に製作を中断している映画も数十本ある。大手傘下はともかく、中小の映画会社は倒産しかねないと警告する専門家もいるなか、一部の映画会社は迅速に対処してきた。自前の映画館も持つベリタスアーツは3月10日、4月3日公開の新作『シューティング・ヘロイン』の上映館を大幅に減らすと発表。公開と同時にストリーミング配信を行うことも決めた。その後、全ての大手映画会社も自社作品の多くでオンライン配信を前倒ししている。
広告市場にも大きな痛手
そんな状況で比較的好調なのは、テレビ画面で見るストリーミングメディアだ。ネットフリックスは在宅勤務の拡大に伴い、利用が急増。EUのデジタル政策を担当するティエリ・ブルトン欧州委員の要請に応じ、3月19日から「30日間、欧州での全てのストリーミング配信についてビットレート(映像1秒当たりのデータ量)を引き下げる」と発表した。不適切な映像を自動削除するストリーミング配信企業ビドエンジェルも、成長率が50%上昇した。