最新記事

映画

トランプが韓国映画『パラサイト』アカデミー受賞にケチ? 多様性認めぬアラ探し、映画界の外野から

2020年2月24日(月)19時12分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

トランプ以外にも白人至上主義な発言が

多くの人が映画の映画祭の多様性を認め、パラサイトの受賞を文句なしで称えているが、一部批判的な人もいることは確かだ。特に、外国人の受賞ということで、映画界以外からの人種差別とも取れる批判発言が波紋を呼んでいる。

なかでもNBCのトークショー「The Ellen DeGeneres Show」で、メイン司会者のエレンの発言が人種差別だとして問題視されている。彼女は、パラサイトのアカデミー賞受賞に触れ、「通訳さんにすぐにメールを送り、通訳がポン・ジュノ監督にメールし、通訳がまた私にメールを送った。私はヌード送ったんだけどそれに対し答えが無かった」と、監督が通訳を介してインタビューや舞台挨拶を行っていたこと、つまり英語が堪能でないことをネタにした。さらに、トークネタが軽い映画のネタバレであることにも批判が集中している。

また、タレントのジョン・ミラーのTwitterでの発言も波紋を広げている。彼は、「ポン・ジュノ監督が『1917 命をかけた伝令』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を押さえてアカデミー脚本賞を受賞した。受賞後、最初の感想は「Great Honor. Thank you(大変光栄です。ありがとうございます)」と言い、それ以外を韓国語でスピーチした」「こういう人たちがアメリカを破壊するんだ」と発言した。多くの発言撤回を求める返信ツイートが付くなか、R&Bの大物歌手ジョン・レジェンドが「誰かから金を貰ってこんな間抜けなツイートを書いたのか?それともただ楽しんで書いているのか?」と怒りの返信ツイートを書き込んだことからさらに注目が集まった。

騒ぎが大きくなると、ジョン・ミラーは「"このような人たち"とは、韓国人を称したのではなく、階級葛藤を深化させる外国映画に賞を与える人々の事を言ったんだ」と苦し紛れの言い訳をしている。

作品を批判する人はいなかった

大半の人は映画の素晴らしさを称えている。一部の批判側の言い分も言語や受賞に対してであり、映画自体に対してではない。それは、すでに文句つけようのない良い作品を目の前にすれば、批判しようとしてもできないことを意味する。荒探ししたい人が細かい揚げ足取りを始めるのは万国共通だ。

それでも、「やはりアカデミー賞はアメリカの賞であり、アメリカの作品が受賞しなければならない」と言うならば、多様性を認める世界の流れに逆らってでも、今後そういう規約を作って審査し、授賞式をすればいい。ただ、そうしたところで今までのような威厳のある、世界中が認め注目する賞として維持できるかは謎である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中