モーリー・ロバートソン:ウイルス同様に「偽情報も進化する時代」に備えよ
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過去を描きつつ未来へ警鐘を鳴らすドラマ
──これからドラマ『ホット・ゾーン』を観る方に、お勧めしたい見どころを教えていただけますか。
先に触れたように、80年代がリアルに描かれているのがひとつの見どころですが、これは『ジ・アメリカンズ』や『ストレンジャー・シングス 未知の世界』といったヒットドラマの成功事例を踏まえているのでしょう。『24』以降のサスペンス表現にも言えることですが、ケーブルチャンネルやネット配信ではドラマの視聴状況がより詳細に分析できるようになり、成功した脚本の要素が次のヒット作に継承されている気がします。
出演者では、主人公の(獣医病理学者)ナンシー役のジュリアナ・マルグリーズは、『ザ・グリッド』というドラマでも国家安全保障会議のテロ対策担当責任者に扮した女優。そこでも職務と母親という公私のバランスで葛藤する女性を演じています。ナンシーの夫で同僚でもあるジェリー役のノア・エメリッヒは、『ジ・アメリカンズ』でFBI捜査官を演じていて、その時のキャラクター設定が今作に反映されているように感じました。そうした過去の出演作での人物造形を、『ホット・ゾーン』のキャラクターに重ねている点も、ドラマファンを楽しませてくれます。
(今年5月の)アメリカでのオンエアでは高視聴率を記録したそうですが、今のトランプ政権が科学を軽視し政治とビジネスを優先する状況に危機感を抱く人が増えていて、そうした社会がある日大きく崩れてしまうのではと不安を抱く人々に響いた側面があったのかもしれません。
たとえば『24』が黒人大統領を登場させたように、良くできたドラマには、架空の話や昔の実話を描きながら、将来を予見したり未来への警鐘を鳴らしたりすることがあります。エボラに限らず、深刻な症状をもたらす伝染病をゼロにすることはできないし、いざアウトブレイクが起きた時にパニックは避けられないかもしれませんが、それにどう対処するかということを考えたり、心の備えをしたりするきっかけになるのではないか。そんなことを『ホット・ゾーン』を観て感じました。
文:高森郁哉 写真:片山貴博
モーリー・ロバートソン
日米双方の教育を受けた後、1981年に東京大学に現役合格。1988年ハーバード大学を卒業。国際ジャーナリストからミュージシャンまで、幅広い分野で活躍中。
【作品紹介】
致死率90%と言われたエボラウイルスがアメリカ本土で初めて見つかった衝撃的な事件を、当事者たちの協力を得てナショナル ジオグラフィックが総力を挙げて克明に描いた全6話のドラマシリーズ。有効なワクチンも治療法もない未知の恐怖に直面した人たちは、いかにして危機を乗り越えたか。一度観始めたら止まらない緊迫のノンストップ・サスペンス大作だ。
【視聴チャンネル&放送日時】ナショナル ジオグラフィックにて放送。
放送開始日時:二ヶ国語版:10月15日(火)スタート 毎週火曜22時~ ※2話連続放送
字幕版:10月16日(水)スタート 毎週水曜21時~ ※2話連続放送
詳しくは:https://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2662