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パックンのお笑い国際情勢入門

日本人は「政治に興味ない」「専門的に生きている」──外国人のお笑い座談会より

NOT STANDUP, SIT DOWN COMEDY CHAT

2019年8月6日(火)09時45分
ニューズウィーク日本版編集部

「笑わせること以外のアジェンダを持つとその分面白くなくなる」

パックン 実体験として、外国人の顔だから日本人と認めてもらえないというネタは、おそらくできる。でも、もっと普通に、今日起きた政治の話をネタにできないのはなぜなんだ、と。社会情勢、世界情勢を笑いにする人が日本になんでいないんだって、不思議に思うんですよ。

チャド それを不思議に思わない理由、2つあります。一般的な日本人が政治に興味あったら(芸人が)勝手にやってる。つまり、政治に興味がない。興味ある人はもちろんいるけど、マスではないんやろなと。

もう1つは、芸人からすると、そこに手を出すリスクというか、アーティストのつもりでやってるのに、社会を変えようとか、笑わせること以外のアジェンダを持つとその分だけ面白くなくなってしまう。こっちのほうが大きな理由。興味があるし時事ネタもできる芸人いっぱいいるんですけれど、お笑いという本業になると、政治ネタをやらないほうにロマンを感じるんです。

パックン なるほど。

編集者 もしオーストラリアでお笑い芸人をやっていたとしても同じ?

チャド ガチで言うと、変えていこうと思っている。オーストラリアに行って、お前らやってること、まだまだやぞと。僕は日本のお笑いが世界で一番ダントツに進んでると思ってます。

パックン 日本のお笑いに学べと。

ナジーブ 私も(日本に政治ネタがないことが)不思議じゃないと思っている理由があります。日本人は専門的に生きています。

パックン ほぉ、それぞれが専門家ということ?

ナジーブ もしもシリアで電気屋さんに行って水道のことを頼んだら、絶対「できるぞ」と言う。でも(日本の)家の近所のベーカリーで、バゲットがないので尋ねたら「うちはバゲットはやってない」と自慢げに言うんですよ。パン屋さんなのにバゲットを売らない。バゲットを否定するわけじゃないが、専門の狭さをアピールする。

レバノンで出会ったある日本人がいて、アラブのスイーツを勉強していた。帰国したら自分の故郷、広島の田舎でお店を開きたいと言っていた。それはアラブスイーツのお店ですかと聞いたら、いや、マムールの店だと。マムールという、アラブスイーツの1つの種類。広島の田舎で? アラブのスイーツの店でしょ? いや、マムールだけです。私はマムールの神様になるぞ、みたいな。

パックン 餅は餅屋。

チャド 自分が知らないことは、その道のプロに任せる。

ナジーブ だから、コメディーの人は政治の人とは違う、それよりはコメディーの腕を磨いてください、となる。

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