最新記事

映画

生誕65周年、ゴジラの顔はこんなに変わってきた(写真15点)

2019年6月21日(金)16時45分

2期:子ども映画の主役として、スマートに。

子ども向けの短編作品数本を同時上映する興行形態となった70年代前半、『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』『ゴジラ対へドラ』『ゴジラ対ガイガン』の3作品で使用されたゴジラは総進撃ゴジラで、そのスマートでヒーロー然とした顔つきは子どもがテレビ発のヒーローに沸く時代のゴジラにはふさわしかったのかもしれない。

penGodzilla190621-9.jpg

『ゴジラ対メガロ』。子どものヒーローだった時代。可愛らしいほど、ぱっちりした目が特徴だ。 © 1973 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

penGodzilla190621-10.jpg

『メカゴジラの逆襲』。ゴジラが劣化したため、頭部を改修。結果、ストーリーに似合う怖い表情に。 © 1975 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

73年公開の『ゴジラ対メガロ』にてゴジラは新造形されたが、その着ぐるみは頭部がやや大きめで目が大きく、口横のラインが愛嬌を感じさせる「可愛い」ものであった。このゴジラの変貌の理由は、頭部の石膏型が破損して使用できなかったことと造形チーフが替わったためなのだが、ゴジラを取り巻くムードも影響したのかもしれない。

3期:再び、銀幕のスターとして復活。

『ゴジラ』が終了して9年、復活ムードが世の中に十分に熟成された時、一般映画として『ゴジラ』は世に問われた。再生されたゴジラは恐怖の対象で、そのフォルムも初代ゴジラを現代的にリファインする作業の結果として生まれたものだ。そして映画に出現したゴジラは十分に重量感があり、人類の脅威にふさわしい怪獣となっていた。

penGodzilla190621-11.jpg

『ゴジラ』。再び怖いゴジラに。60年代のゴジラのイメージをミックスしたかのような頭部となった。 © 1984 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

penGodzilla190621-12.jpg

『ゴジラvsビオランテ』。頭部が小さくなり瞳は大きくされ、白目部分が減る。歯並びも2列となる。 © 1989 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

ようやく復活したゴジラ映画を展開するにあたり、より生物感あふれるスタイルが検討され、『ゴジラvsビオランテ』にてそのゴジラはデビューした。背びれのバランスも上部に重心を置く力強いもので、以降小さな変更はあったものの、『ゴジラvsデストロイア』までのゴジラはこれを基本にして着ぐるみが制作されている。

4期:21世紀型ヒーローの模索、さまようゴジラ

3年間の休止を経て再び復活したゴジラは、スタイルを一新させていた。前傾姿勢で燃え上がる炎をモチーフとした巨大で鋭角的な背びれ、体色もそれまでの黒から濃緑色。『ゴジラ2000』『ゴジラ×メガギラス』のゴジラはまさに21世紀型といえよう。『ゴジラ×メカゴジラ』などのゴジラも同デザインだが、直立姿勢で色調が変わった。

penGodzilla190621-13.jpg

『ゴジラ2000』。キンゴジのような深く裂けた口と長い数本の牙が、猛々しさを表現する。 © 1999 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

penGodzilla190621-14.jpg

『大怪獣総攻撃』。徹底した悪役であるため、感情移入を拒むべく白目のみとなっている。 © 2001 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

2001年の『大怪獣総攻撃』は、監督の金子修介の希望で昭和スタイルへと先祖返りし、対決怪獣を極めて小さくし、2mを超えるゴジラの着ぐるみにした。ゴジラの属性は太平洋戦争の「無念」「怨念」で、初代と相通じる部分も多い。2004年の『ゴジラ FINAL WARS』もデザインは昭和スタイル、アクション向きの造形にされている。

penGodzilla190621-15.jpg

『ゴジラ FINAL WARS』。細長い印象の顔つき。素早い動きで怪獣を次々と瞬殺。 © 2004 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

<Pen+(ペン・プラス)『完全保存版 ゴジラ、再び。』掲載>

【関連記事】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』撮影現場で見た監督のこだわり


penGodzilla_cover200.jpgPen+『完全保存版 ゴジラ、再び。』(CCCメディアハウス刊)

1954年11月3日、日本が世界に誇る唯一無二のキャラクター、ゴジラが誕生した。東京湾から上陸したゴジラが銀座の街を破壊する圧倒的迫力に、観客は心を奪われた。その後、これまでに30作以上のゴジラ映画が製作され、シリーズ累計動員数も、日本だけで1億人を突破。2016年の『シン・ゴジラ』の大ヒットも、記憶に新しい。

そして、ゴジラ生誕65周年となる今年、ハリウッド版ゴジラの最新作であり超大作、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』として、銀幕に再びゴジラが帰ってくる。ゴジラ、ラドン、モスラ、そしてキングギドラ――怪獣たちの壮絶なバトルに息をのむ。マイケル・ドハティ監督が、ゴジラ愛全開でつくった最新作紹介はもちろんのこと、誕生秘話から全作品解説、ライバル怪獣まで、ゴジラのすべてがわかる完全保存版。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中