文化財もアスリートもアニメも...境界を越えるコミュニケーションの未来へ
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非言語で価値を共有できるのがポップカルチャー
――テーマは「日本のポップカルチャーの可能性」とのことですが、これまで日本のポップカルチャーは世界にどのような影響を与えてきたのでしょうか。
沖田 1つ目はアニメを通じた人材の交流です。例えばサッカー漫画を共通のアイコンとして、世界のサッカー選手と日本人選手が交流を始めるなど、日本のアニメには大きな影響力があります。2つ目は、日本を好きになってもらうきかっけになっているということ。アジアの観光客からは、お台場にあるガンダムを見たいとか、そのような声をたくさん聞きました。
奥窪 外国人観光客がお台場のガンダムを見に来るという話には驚きました。100年後や200年後には、二条城に並ぶ文化財的な存在になっている可能性もあるということですね。
小林 日本のアニメがビジネス以外の面で与えた影響もあるのでしょうか。
沖田 ノーベル賞の受賞者に、日本のロボットアニメを見て科学者になりたいと思ったという先生がいるエピソードが示すように、教育の面で影響を与えていることが多いようです。
――ビジネスや生活、教育といった、コンテンツ以外の分野にポップカルチャーを活用していくという内容は興味深いと思います。
沖田 アサツー ディ・ケイが関わった仕事で、中国人観光客に対して日本独自のマナーを啓蒙するというガイドブックをつくった際に、ドラえもんを活用しました。ドラえもんというアイコンを使うことで、親しみを持って伝えるという部分でいうと目的は達成できたのではないかと思います。共通のアイコンがあると、言葉を話すことができなくても、何となくそこで価値が共有されるということが起こります。
――リオ・オリンピックの閉会式での「アベマリオ」はまさによい活用例ということですね。
沖田 マリオというキャラクターを深く知っている人はそれほどいなかったとしても、何となく知っているだけでも、共有されるということですね。私も「アベマリオ」は見ていてワクワクしましたし、2020年までにあのような流れがもっと出てくるといいと思いました。
小林 ポップカルチャーにフォーカスが当たったのはすごくよかったと思いました。マイナスのイメージも含んでいたアニメや漫画が、世界的に認められて今では日本のひとつの文化になっているというのは本当に素晴らしいことです。
沖田 でも、いまだに日本ではアニメはオタクだと思っている人が多いのは残念。海外の人にはネガティブなイメージはなくて、海外のアニメ好きな人って、本当に普通の人ばかりです。その点は、我々日本人は見方を変えなければいけません。奥窪さんは日本の文化財に携わっているということで、外国人に日本のよさを気づかされることもあるかと思いますが、その点で我々が気をつけないといけないことはありますか。
奥窪 文化財に対してありがたみを持ちすぎて、価値あるものという前提で見がちなところがあります。博物館や美術館に行く行為自体がステータスみたいになりがちで、アニメや漫画を楽しむのと同じ感覚で接しないといけないのかなと思いますね。
世界各国から集うリーダーも議論に参加
――当日は日本だけでなく、60を超える国や地域からも多くの人たちがやって来ます。改めて官民ワークショップに期待することとは何でしょうか。また、2020年に向けた「改革2020」という政府の成長戦略がありますが、それに対しても期待などあれば教えてください。
奥窪 我々のセッションでは、日本ならではの技術進化の在り方、技術との付き合い方を深掘りしていく方向性を考えています。その中で、海外の人がどう感じるのか、ぜひインタラクティブに会場の人にも意見をいただくような形で進行したい。また、「改革2020」プロジェクトには観光立国のショーケース化というテーマがありますが、凸版印刷が文化財のVRを通じてアーカイブしているデータが役立つように、インフラ的な整備や利活用の弾力的なルールづくりを官民で議論し、2020年には実現できるよう政府に期待しています。
小林 今回のフォーラムは、外国人を含めていろいろな人たちが集まる中で生まれる議論です。日本の素晴らしさや日本が誇るべきものを、フィルターをかけずに議論の中でみんなが気付いて、それがひとつの発見として残ればいいなと思っています。政府はそれをどう具現化していくのかということを含めて、議論の結果を活かして未来へ繋げてほしいと思います。
沖田 セッションでは、業界をリードしている4名の方に登壇していただきます。海外の人もいるので、「日本人の思う日本」と「海外の人が思う日本」の違いなどをディスカッションしていただけるのかなと思っています。世界に向けて日本の文化を発信していくという視点で考えると、政府と企業が一丸になってオールジャパン体制で盛り上げていくことを、うまくできればいいなと考えています。
「境界を越えるコミュニケーション」とは何か。それをこのフォーラムの場で、日本から世界に発信していく意義とは何か。本記事では各パートナー企業の担当者に語ってもらい、それにより大きな可能性が見えてきたが、これらはあくまで概要にすぎない。ワークショップ当日には、世界各国から集うリーダーたちが議論に参加することで、より深みのある「未来への提言」が形づくられていくはずだ。
Text:西山 亨
Photo:遠藤 宏
文部科学省 スポーツ・文化・ワールド・フォーラム
会期・会場:10月19日~20日:京都(ロームシアター京都等)、10月20日~22日:東京(六本木ヒルズ等)
主催:文部科学省、スポーツ庁、文化庁
http://wfsc2016.mext.go.jp/