文化財もアスリートもアニメも...境界を越えるコミュニケーションの未来へ
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奥窪 凸版印刷は東京国立博物館と共同で、同館内に「TNM & TOPPANミュージアムシアター」を設置し運営しています。ここではVRによる文化財の新しい鑑賞方法を体験することができます。例えば、通常は展示ケースに入っているような国宝や重要文化財に指定されるような茶壺を実際の茶室の中で観る体験はなかなかできませんが、VRではその場で実際に観ているかのような体験ができます。
VR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』(監修:東京国立博物館 制作:凸版印刷株式会社)
一般的に、博物館に行って展示されている文化財を観ても、説明なしにその魅力を感じるのは難しいものです。そこで、VR技術を用いて、文化財を実際には観ることができない場所や角度で鑑賞したり、博物館の学芸員などの学術監修のもと制作当時を再現することで、文化財の新たな魅力を伝えようとしています。
沖田 精神や身体とテクノロジーとの融合も可能性がありそうですね。
奥窪 バーチャルと身体との関係では、例えば茶室はその中に入って宇宙を感じるための空間ともいえます。そういう意味では、茶室の空間はバーチャルでもある。たぶん視覚だけではなくて、茶室のにじり口から体を曲げて入ることや、正座をして器を持つことなど、五感を研ぎ澄ますことによって、新しいバーチャルな空間が生まれる。身体の動きや意識が交信して何か新しい発想とか、そういったものに繋がるのではないかということを考えています。
小林 文化財をVRの技術で再現すると、改めて日本の素晴らしさを理解するきかっけにもなるのではないでしょうか。技術の素晴らしい掛け算だと思います。
アスリートとの関係をITで変えていきたい
――リオデジャネイロ・オリンピックでは日本選手の活躍が目立ち、一方でマラソンや登山など「する」スポーツも広がりを見せています。アスリートと企業、国民の関係をテーマとしていますが、スポーツを楽しむ層の拡大はどのような影響を及ぼすでしょうか。
小林 スポーツをする人が増えれば、スポーツを観る人も増えていく。スポーツに関する消費額が増えるため、スポーツ市場全体が大きくなり、それによってアスリートの価値が高まります。企業がアスリートを支援する目的のひとつに宣伝塔としての期待があり、アスリートの価値が高まれば、もちろんその効果は大きくなります。そして、アスリートが多くの人たちと関わる環境が生まれれば、アスリートの人格形成や自立性の向上にも貢献します。
奥窪 アスリートへのスポンサードの在り方が、インターネットの発展によって大きく変わりつつあると言われていますね。
小林 SNSの登場は、アスリートの影響力を可視化できるようになった事例だと思います。SNSでフォロワーが何人いるのかという、数字で語られるようになったところが大きく変わった点です。
奥窪 アスリートと企業、国民の理想の関係というものがあると思いますが、それを実現するにあたり他に考えていることはありますか。
小林 例えば、オリンピックで日本人選手がメダルを取って注目されても、人気が一過性で終わってしまうことはすごくもったいないなと思います。その人気が続く環境をITでどのようにつくっていけるか。アスリートのその後の活動などを含めて、ITによって解決できる情報の伝え方を考えていきたいと思います。
沖田 私はサッカーが好きなので、残念だったのはなでしこジャパンですね。2011年のワールドカップで優勝して、2012年のロンドン・オリンピック大会で銀メダルを取って、でもリオ・オリンピックは予選で敗退してしまいました。人気が一過性だったために、選手の置かれている環境はなかなか改善していません。こうした問題についての議論は、今後スポーツを考えていく上で必要になっていくでしょうね。
――アメリカに野球を観に行くとか、欧州にサッカーを観に行くといった形で、外国人が日本にスポーツを観に来るという話はあまり聞きません。日本はそうした意味でのスポーツ大国になれると思いますか。
小林 なれると思います。日本人選手の場合、フィジカルな面で不利なところはあります。しかし、スポーツの見せ方を変えることができるのもITやIoTの技術だと思います。例えば、ネットメディアでスポーツが放送されると、付加価値のある情報を加えることによって、今までスポーツに興味のなかった人も面白いと思うかもしれない。
奥窪 見せ方も含めてスポーツをコンテンツとして捉えるという考え方には、はっとさせられました。見せ方が面白いから日本のスポーツを観に来るというのは、非常に可能性があると感じますね。