過去作からの「反復」がもたらす光と影――『フォースの覚醒』レビュー(軽いネタバレあり)
エイブラムス監督は新たな3部作の序章として、シリーズの伝統を引き継ぎつつ、新たな歴史の基礎を築くという大役を果たした。銀河帝国の流れをくむ「ファースト・オーダー」の勢力とこれに対抗するレジスタンスの戦いという大きな構図を示しつつ、新キャラたちを登場させ、古株の合流も無理なく実現させた。
シリーズのアイデンティティーを保つために過去作からの「反復」は有効だが、『フォースの覚醒』ではそうした反復が短縮された形で登場するので、駆け足の感が否めない。
たとえば、若きフォースの使い手という意味で旧シリーズのルークに相当する本作のレイは、ジェダイ・マスターに教わることもなく、数回の試行錯誤であっさりフォースを体得してしまう。『エピソード5/帝国の逆襲』でルークがヨーダの下で行った厳しい修行はなんだったのかと思わずにはいられない。「The Force Awakens」という原題も象徴的で、フォースが覚醒する、つまりは(修行して身につけるのではなく)勝手に目覚めることを示唆していたのだ。
さらに言えば、エピソード4~6を通じて描かれる「ある重要なテーマ」がやはり短縮形で反復されるのだが、具体的に書くと軽いネタバレでは済まなくなるため、ここでは伏せておこう。ともあれ、盛り込むべき要素が数多くある中で、これらの反復があわただしく駆け足で語られるため、単体の作品としては重厚感に欠け、人物描写の浅さ、ドラマとしての物足りなさを感じてしまう。
エピソード8、9はどうなる?
エピソード8は『LOOPER/ルーパー』のライアン・ジョンソン監督がメガホンを取り、2017年に公開されることが決まっている。エピソード9は2019年公開、監督は『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウが務める。
当然、今後のストーリーは未公表だが、ジェダイ・マスターの唯一の生き残りであるルークがレイを鍛えて、カイロ・レンと互角に戦える女闘士にする方向性が十分考えられる。
ラスボス的な最高指導者スノークの動きも気になるところだ。演じているのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラム、『猿の惑星』新シリーズのシーザーに扮した当代随一のモーション・キャプチャー俳優、アンディ・サーキス。激しいアクションもこなせる役者なので、エピソード9あたりでフォースかライトセーバーを駆使した壮絶なバトルが期待できそうだ。
[執筆者]
高森郁哉
米国遊学と海外出張の経験から英日翻訳者に。ITニュースサイトでのコラム執筆を機にライター業も。主な関心対象は映画、音楽、環境、エネルギー。
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