最新記事

インタビュー

『スター・ウォーズ』を描き続けて

ルーカスフィルムの公認イラストレーター、TSUNEO SANDAが語る名シリーズの色あせない魅力

2015年12月9日(水)18時30分
安藤智彦(本誌記者)

フォースと共に ルーカスフィルムからの発注を待つだけでなく、自ら作品を提案して描くスタイルに移行するきっかけになった作品『25th Anniversary』 ©Lucasfilm Ltd./TSUNEO SANDA

 今月18日、シリーズ最新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』がついにベールを脱ぐ。宇宙を舞台にした壮大な叙事詩の第1作が世界を驚かせてから38年。シリーズ通算7作目となる『フォースの覚醒』は、前作『エピソード3/シスの復讐』から10年ぶりとなる待望の作品だ。

 世界中に熱狂的なファンを持つ『スター・ウォーズ』は、コミックや小説、アニメなどさまざまな形に拡張されてきた。シリーズの世界観を1枚の絵に凝縮させるイラストレーションも、その1つ。その中で、ジョージ・ルーカスの絶大な信頼を得る伝説的存在が、TSUNEO SANDA(三田恒夫)だ。

 世界でも数少ないルーカスフィルムの公認イラストレーターの1人として、160点以上の『スター・ウォーズ』作品を描いてきたSANDAに、本誌・安藤智彦が話を聞いた。

――『スター・ウォーズ』とのなれそめは?

 アメリカのSF雑誌の表紙や特集ページに作品が採用されたり、『スター・トレック』のポスターアートを手掛けたりしていたとき、たまたま当時の代理人の紹介で参画することになった。あれからもう20年になる。

――新作『フォースの覚醒』は前作からかなり間が空いている。

 私は年間10枚以上コンスタントに描いているから、映画の新作が出るかどうかはあまり関係ない。むしろ新しい情報がないほうが自分らしさを出せるし、創作に集中できる。映画が封切られるとイラストより映画に注目が集まってしまう面もある。

――イラストの題材としての『スター・ウォーズ』の魅力は?

 もともと好きな映画作品だったので喜んで引き受けたが、最初は資料が少なくて苦労の連続。プレッシャーも大きかった。ルーカスフィルムからの細かい注文に応えるのはしんどい面もあったが、自分の作品が残るなら、という思いで続けた。まさか30年以上続くシリーズになるとは。みんな最初の3部作で完結したと思っていたのでは?

――イラストには独自の解釈を加えているようにみえる。

『スター・ウォーズ』の仕事を始めて7、8年たったあたりで、もっと描きたいという欲求が強くなった。ルーカスフィルムからの発注を待つだけでは、描ける枚数に限界がある。そこで私から『25th Anniversary』のイメージスケッチを提案した。

 その後、思い切ってルーカスフィルムを訪問した。運よくジョージ・ルーカスにも会えた。私の絵をコレクションしてくれていたのはうれしかった。結局、ルーカス直々の指名もあって、こちらから作品を提案して描くスタイルに03年から移行できた。

 最近はルーカスフィルムからの催促はほとんどなく、着想が生まれ次第どんどん提案している。先方もリスペクトしてくれていて、完成した作品には修正要請を一切してこない。ただし、作品が気に入らなければ受け入れない。とても明快で緊張感のある、私の好きな世界だ。

 アクリル絵の具で筆やエアブラシを使って描くのが私のスタイルで、これはずっと変わらない。写真やCGのようなリアルさを強調する、ものすごいテクニックを持った描き手はアメリカなどにたくさんいる。そんな世界で生き残るには、技巧よりも発想力が大事だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中