『スター・ウォーズ』を描き続けて
――確かに、ほかではあまり見ないモチーフが目立つ。
日本の武士の鎧兜(よろいかぶと)を身に着けたダースベイダーのような『スター・ウォーズ』以外の世界との融合や、レイアやアミダラといったヒロインのバストアップのカット、100体以上のキャラクターが一堂に会した一枚など、ありそうでなかったイメージを掘り起こすのは楽しい。
黒澤映画や時代劇テイストを好むルーカスの眼鏡にもかなったようだ。屏風(びょうぶ)絵シリーズの『Butterfly』などは、ルーカスに日本文化への憧憬があったからこそ受け入れられたと思う。
――発想のポイントは?
普通にやってしまうと面白みもオリジナリティーも生まれない。自分の角度から世界をつくり上げ、『スター・ウォーズ』の要素を練り直す。ただし、本道から外れ過ぎないさじ加減も忘れてはならない。一見外れているようでいて、よく見ると「アリだよね」という世界を構築できるかどうか。『スター・ウォーズ』の根本的な世界観をいったん咀嚼した上で、許容範囲のギリギリまで攻めていくイメージで描いている。
――新作『フォースの覚醒』をどう評価する?
実は私が新作に関して把握している情報は、公式サイトや関連書・雑誌で明らかになっている内容と同じだ。映画を公開前に見る機会はない。これまでもそうだった。
――見ていない映画についてイラストを描くのは大変そうだ。
自分で集めた資料を基にコンセプトを練り、描いていく。それだけだ。
もっとも今までのファンと、これからのファンでは見えている世界が違うはず。新作からのファンでも理解できる旧作のイラスト、逆に既存のファンにとっても違和感のない新作のイラスト。チャレンジだが、そうした橋渡しが可能なのもイラストレーションの醍醐味ではないか。
――どんな工夫を?
『エピソード1』から『エピソード6』まではダースベイダーことアナキン・スカイウォーカーの物語だった。彼自身、そして彼のフォースの誕生から死までがつづられている。『エピソード7』で始まる新たな3部作では、彼の物語が次の世代へ受け継がれていくストーリーが柱になると聞いている。ニューズウィークの『スター・ウォーズ』特別号の表紙に提供したイラストでも、そのニュアンスが感じられるように心掛けた(日本版ムックは12月9日発売)。
――確かに、ダースベイダーを下敷きに新旧のキャラクターが並んでいる。
過去の6作品のキャラクターと新作のキャラクターが1枚の絵に集合したカットは、おそらく初めてだ。旧作から新作へ『スター・ウォーズ』の遺伝子が受け継がれていくイメージを訴求したつもりだ。
ラフスケッチの段階では、旧作のキャラクターが並ぶ上半分をモノクロ調にして色を落とし、手前に並ぶ新作のキャラクターが色鮮やかになっていくグラデーション調の色合いを考えていた。最終的にはフルカラーのイラストになったが、手前になるほど色調が鮮やかになるバランスは残している。