こんな人は、モン・サン=ミシェルに行ってはいけない
世界60カ国以上の世界遺産を訪れた旅行の猛者がぶった切る、ガッカリしないためのリアルガイド
かつては難所 島がひとつの行政区(コミューン)にもなっているモン・サン=ミシェル。手前で草を食むのは、名物プレサレ羊 wims-eye-d/Shutterstock
高いお金をはたいて、長時間の移動に耐えて、やっとたどり着いた旅先で「え? たったこれだけ!?」とガッカリした経験はないだろうか? それは世界遺産も同じ。「世界遺産は、素晴らしい観光地にあらず」と、世界60カ国以上、185件もの世界遺産に足を運んだ花霞和彦氏は言う。
旅行の猛者である花霞氏が著した『行ってはいけない世界遺産』(CCCメディアハウス)は、「見どころ」と「コストパフォーマンス」をもとに世界遺産をぶった切った、これまでになかったガイドブック。20件の世界遺産を徹底検証し、本当に行く価値があるのか、値段と時間と労力に見合うのかを教えてくれる。
ここでは、その中から「ご当地グルメに目がない人は行ってはいけない モン・サン=ミシェル」を抜粋・掲載する。
『行ってはいけない世界遺産』
花霞和彦 著
CCCメディアハウス
「西洋の驚異」と呼ばれる島
モン・サン=ミシェルはノルマンディー地方南部、サン・マロ湾上に浮かぶ小島で、そこにそびえ立つ修道院もまた同じ名が付けられています。708年、地元の司教が「この地に聖堂を建てよ」という大天使ミカエルからのお告げを受けて礼拝堂を造ったことが、「聖ミカエルの山(モン・サン=ミシェル)」の由来です。
サン・マロ湾はヨーロッパでも潮の干満がもっとも激しい場所として知られていて、その差は15メートル以上にも及びます。このため、かつてのモン・サン=ミシェルは満潮時には海に浮かび、干潮時に地続きとなる自然の橋が現れ、歩いて渡れるようになっていました。
この激しい干満の差により、一気に押し寄せる潮に呑まれる巡礼者も多く、「モン・サン=ミシェルに行くなら遺書を置いていけ」という言い伝えが残っているほどの難所でもありました。1877年に対岸との間を埋め立てて道路が作られましたが、環境の変化が危惧され、現在では潮の流れを変えることのないよう橋が架けられています。
堪能するなら現地で一泊
モン・サン=ミシェルはパリから遠いので、日帰りバスツアーで訪れる旅行者が多いようです。しかし多くの日帰りツアーでは、昼間のモン・サン=ミシェルしか見ることができません。トワイライトから闇夜に浮かぶ幻想的なシルエット、朝日を浴びる姿まで、せっかく行くからには様々な表情が見たい! と思ったワタクシは、現地で1泊することに決めました。