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アメリカ次期大統領候補の「おばあちゃん」としての顔

2015年7月17日(金)16時45分
印南敦史(書評家、ライター)

 なお本書の元になっているのは、ハードカバー版ののちに発売されたペーパーバック版であるが、その点もトピックのひとつとなっている。なぜならペーパーバック版には、新たに書き下ろされたエピローグが加えられているから。そして注目すべきは、ここで出馬を決意した理由が説明されている点である。

 つまり、実質的な出馬表明になっているのだ。しかもそのことを、孫のシャーロットが誕生しておばあちゃんになったという事実へとうまくつなげてもいる。


生まれたばかりの赤ん坊と過ごす毎日は、奇跡だ。シャーロットのちょっとした仕草が、私には愛おしくてたまらない。(下巻443ページより)


 ここにあるのは、どこにでもいそうな普通のおばあちゃんの姿だ。ただし、この直後の記述には政治家としての側面も垣間見えるのである。


私はシャーロットがこの世でとび抜けて一番かわいく、賢く、完璧な赤ん坊だと信じてやまないが、この本当の奇跡が世界中で起こっているということも理解している。(中略)みんなが自分たちの小さな命を誇りに思い、その小さな命の数だけ未来を夢見ているのだ。(下巻443ページより)


 ともすれば見落としてしまいそうなこの文章は、彼女が次期大統領候補であることを意識させてくれる。そしてその向こう側に、(それがどのようなものになるかは別としても)未来のアメリカの姿が見える気もする。はたしてそれは、私の考えすぎなのだろうか?



『困難な選択』(上・下)
 ヒラリー・ロダム・クリントン著
 日本経済新聞社訳


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