F1映画『ラッシュ』は熱くスリリング
いい例が、富士スピードウェイでのレースだと思う。あれだけ特別で、感動的で、はらはらさせられるクライマックスを説得力もって描くことができるのも、実際に起きたことだからだ。
『アポロ13』で面白い話があるんだ。僕が初めて実話に基づいて作った映画だが、内覧試写でアンケートを取ったところ非常に好評だった。でも、ある23歳の男性が酷評していて、「エンディングについてご意見をお願いします」という欄に「ハリウッドのひどい嘘っぱちだ。彼らが生存できるわけがない」と、でかでかとした字で書いてあった。でも実話なんだから、嘘じゃないんだよ!
──『ラッシュ』の企画が持ち上がった当初、あなたはF1のファンではなかったというし、F1自体もメジャースポーツではない。それでも面白い話になると思ったのはなぜか。
登場人物が魅力にあふれ、個性的だと思ったから。物語の背景となる70年代のカルチャーにもすごく引かれた。自由奔放で大胆で、セックス革命が起こり、あの時代特有のロマンがあった。
それにテクノロジーの発展で以前なら無理だったような、臨場感があってスリルに満ちたレース映像が撮れるとも思った。キヤノンの小型カメラを初めて使用したけど、本当に性能がよかった。
──レースシーンがとにかく圧巻だが、CGをかなり使った?
イエス。ただ、当初予想していたよりも実写を多く使った。というのも、かつてラウダやハント、マリオ・アンドレッティが実際に運転していた車を貸してもらうことができたからね。それらのレプリカも造ったが、本物も使っているから、それらに見劣りしないようにということでリアル感の基準値がものすごく高くなった。