最新記事

映画

リーマン危機後のトホホな中年男たち

リストラされた管理職3人の第2の人生を切なく描く『カンパニー・メン』

2011年9月22日(木)13時03分
キャリン・ジェームズ(映画評論家)

転落の日々 若くして管理職になったボビー(ベン・アフレック)はリストラで自信もプライドもぼろぼろに © 2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS

『カンパニー・メン』は、悲痛なほどのリアルさで経済危機が個人に及ぼす打撃を描いた作品だ。テレビドラマ『ER 緊急救命室』を手がけたジョン・ウェルズ監督は、作品にメロドラマを加える意義をよく分かっている。だからこの作品では、突然クビになって快適な中流階級の生活を吹き飛ばされる管理職3人を登場させた。

 最も心が痛むのは、エリートサラリーマンのボビー(ベン・アフレック)だ。ローンを抱える妻子持ちで、ポルシェも乗り回す自信家のボビーだが、突然解雇される羽目に。やがて、以前からボビーのエリート気取りをバカにしていた義理の兄の下で、建設現場で働き始める。

 一方、溶接工から重役にのし上がったフィル(クリス・クーパー)も、あえなく解雇される。職探しを始めるものの、職業カウンセラーからは年齢がばれるからベトナム戦争で戦ったことを履歴書に書かないよう忠告される。

 3人のうち、最も現実味に欠けるキャラクターでさえ痛ましい。重役のジーン(トミー・リー・ジョーンズ)は解雇の背後にある倫理に疑問を呈すが、そのせいで会社から追われてしまう。

 エンディングは明るく締めくくろうとするが、説得力があるはずがない。私たちは今まさに深刻な経済状況におかれているのだから。今年のクリスマスは、偽りのない感情をえぐり出すこの作品の主人公3人を見ながら過ごすのがふさわしいかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、韓国は明らかな敵対国と明言=KC

ビジネス

中国人民銀総裁、株式市場への違法な資金流入をけん制

ビジネス

TSMC、最高値更新 決算を好感=台湾株式市場

ワールド

中国当局が「子ども持つ不安」巡り調査、人口減受け妊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
2024年10月22日号(10/16発売)

米大統領選を揺るがす「オクトーバー・サプライズ」。最後に勝つのはハリスか? トランプか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くその正体
  • 3
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせる作戦か、戦争でタガが外れたのか
  • 4
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 5
    ナチス・ドイツの遺物が屋根裏部屋に眠っていた...そ…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    シドニー・スウィーニーの最新SNS投稿が大反響! 可…
  • 8
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 9
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 10
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 5
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 6
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 7
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 8
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 9
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリ…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中