スターとトイレと撮影現場
一方、『LOST』の俳優ドミニク・モナハンのトレーラーは破滅的だった。唯一の装飾品は高さ1メートル近いファンレターの山。自分の人気を誇示したかったのか、それともただの収集魔なのか。ものすごい光景だったのは確かだ。
共演女優のエバンジェリン・リリーはトレーラーに呼んでもくれず、撮影の合間にビーチでインタビューしなければならなかった。しかし有名であることはどんなに大変か、カナダの実家がどんなに恋しいかを話す彼女はとても優しかった。愛読書の自己啓発本まで私にすすめてくれた。
撮影現場で取材を受けたがらない俳優もいる。女優のレイチェル・グリフィスは『シックス・フィート・キアンダー』のセットにうんざりしていた。なにしろ、俳優は14時間トレーラーで過ごす日もある。そこで彼女は、真っ昼間から私たちをお気に入りのバーに連れ出した。酒は飲まなかったが、彼女は驚くほどリラックスしていてオープンだった。みんなで連れ立って部屋の奥のビリヤード台を見にいったりもした。
セットという生活空間
自宅に招待してくれる俳優もいた。『CSI:マイアミ』の俳優デービッド・カルーソが一例だ。撮影現場で面白かったのは、カルーソがサングラスを決してはずそうとしなかったこと。彼はとてもまじめで、撮影中でなくてもタフな役柄を崩したがらなかった。仕事の最中にインタビューされることすら嫌がった。
だが、自宅でのカルーソはこれ以上ないくらいのナイスガイだった。自分のキャリアや、ビーチを見渡す自宅での暮らしについて彼は私に語ってくれた。リビングの壁はガラス張りで、大きくて長いソファがあった。
こんな具合にタイプはさまざまだが、一般的に俳優はセットという生活空間でリラックスする。セットに招かれるということは、彼らの自宅に招かれるようなものだ。
『スタジオ60オン・ザ・サンセット・ストリップ』に出演したマシュー・ペリーとブラッドリー・ウィットフォード(『ザ・ホワイトハウス』にも出演)は、私を絶えずジョークのネタにし、私のメモ帳を隠したり、飲み水を盗んだりと、いつもいたずらを仕掛けてきた。ウィットフォードは私をおだてて、あるシーンにエキストラ役で出演させようとしたほどだ。
面白い考えだったが、いや待てよ、と思い直した。撮影となれば、ワンシーンを撮るのに何時間も立ちっぱなしかもしれない。もしトイレに行きたくなったら......。
[2008年12月17日号掲載]