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【影響力を上げる】ひとりの声が行政に届いた...前橋市が実現した支援の仕組み

2025年3月7日(金)11時30分
河村正剛

ふるさと納税を活用した支援の取り組みは、全国的にも高い評価を受けました。2017年には「ふるさとチョイスアワード2017」の全国大賞を受賞しています。全国1700以上の自治体が参加するふるさと納税の中でも、地域貢献度や持続可能性、独自の創意工夫を評価して贈られる賞です。

物質的な返礼品ではなく、子どもたちの未来への投資という新しい形のふるさと納税。この試みは、社会貢献の新しいモデルケースとなりました。

こうした仕組みづくりは、とうてい私個人の力で実現できるようなものではありませんでした。ふるさと納税を活用するというアイディアを出したのは市長ですし、役所や施設の職員、里親、支援者、みんなの力が実を結んだ結果です。

「1つの仕組み」が「3つの自治体」に広がる

前橋市での成功を足がかりに、支援の輪は着実に広がっていきました。次々と新しい自治体が動き始めたのです。

前橋市に続いたのは隣接する伊勢崎市でした。伊勢崎市では前橋市と同様、ふるさと納税を活用した支援が始まりました。次に、同じ群馬県内の富岡市でも独自の支援が始まりました。富岡市の場合は、ふるさと納税ではなく、市独自の「お富ちゃん子ども福祉基金」が設立されました。お富ちゃんは富岡市イメージのキャラクターです。

特筆すべき点は、この支援の形は、決して特別な自治体だけにしかできないような取り組みではないという点です。山本市長の言葉を借りるならば、「財源がないのではない。やる気がないのだ」ということになります。この言葉が全国の首長に届いてほしいと思います。

前橋市がつくった仕組みには次のような特徴があります。

◎ 外部からの財源確保
◎ 目的が明確で透明性が高い
◎ 一般財源ではなく独立した基金として運営できる

ふるさと納税の使い道としてよくある「市長おまかせコース」のような曖昧な使途ではなく、明確な使途を示すことで、その使い方に賛同する支援者の共感をダイレクトに得ることができました。

■ 河村正剛(かわむら・まさたけ)
社会現象となった『タイガーマスク運動』の発端となった人物。自身が孤児として育ち、16歳から一人暮らしをしながら高校に通う。自動車整備会社勤務を経て営業職としてカラオケ機材大手に就職。24歳から児童養護施設への寄付を開始。2010年クリスマスに前橋市の児童相談所にランドセルを贈り話題となる。現在は行政や民間企業と協力し、児童養護施設やひとり親などの支援などを続けている。

◇ ◇ ◇

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