最新記事
BOOKS

元朝日新聞「事件取材の鬼」も10代の同級生たちの中では戸惑うばかり...事件記者、保育士になる?

2024年12月20日(金)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

手取り足取り面倒を見てくれる短期大学の現状

保育学科1年の全容がつかめました。

一、クラス制で1組から4組まである
一、各組に担任教員がつく
一、各組に委員4人を置く
一、出欠・遅刻の連絡は必ず担任に連絡

むむむ。ここは小学校か? 大半の学生は高校を卒業したばかりゆえ、こうした仕組みに違和感は持たないでしょう。クラスなし、日々の出欠管理なし、落第しようが留年しようが行き倒れになろうがすべては自己責任の大学で過ごした身には驚きです。

短大はいまどこも存続が危ぶまれています。18歳人口の減少と4年制大学志向の高まりで、学生数は減少の一途です。学生募集停止や閉鎖する短大が相次いでいます。

文部科学省の学校基本調査によると、2023年度の短大学生数は約8万7千人、ピークは1993年度の約53万人でした。

これに伴い短大の数も減っています。文科省によると1996年度の598校が23年度は300校です。わが東筑紫短大もここ数年定員割れが続いていて、学生確保に躍起です。

こうした状況下で入学した学生です。手取り足取り面倒を見て、途中で辞めることのないよう卒業まで懇切丁寧に支えようとしているのでしょう。クラス制や担任制導入の背景をあれこれ考えていました。

短大は、学校教育法で大学の一類型と位置づけられています。目的は、同法曰く「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」です。

大学とは目的と修業年限にやや違いがあるものの、ここは荒波ざぶざぶの社会に出る前に乗り切る何かを身に付ける場所です。ならば当方が自堕落に過ごした大学の伸び伸び、放任、すべてはおまえが考えて決めよの方が若い衆の自立を促すよなあ、と胸の内で独り言ちていました。

教員の中にも同じように思う人がいるはずだ。いちど話し合ってみよう。いかん。記者時代の悪い癖だ。疑問に思ったことにこだわり、議論をふっかけようとしている。我に返ると、学生生活を送るうえでの大切なあれこれを教員が説明なさっている。集中しなければ。

ついつい何でもメモを取る

オリエンテーションは伝達事項の嵐です。保育学科4クラスの担任教員の紹介に始まり、卒業に必要な取得単位の数、教科書販売の日時や場所、図書館の利用方法、「針供養」や「大学祭」といった行事案内などなど。

さらに授業はひとコマ90分間で年に30回あり、欠席は8回までならOK、定期試験は年に2回で受験時には必ずスーツと校章着用......。

まだまだ続きます。新聞記者時代からずっと愛用している「ヂーエヌ紙製品株式会社」(東京都荒川区)製のノートにこれらを書き留めていたら、あっという間に5ページが埋まりました。

甚だしく強い筆圧の大きな文字を黙って受け止め、インクを吐き出してくれるLAMYのボールペンが頼もしいぜ。周囲を見渡すとメモしている学生はほとんどいません。まあ、配られた学生便覧や説明資料に書かれてありますしね。

見たこと聞いたことを余さず紙に刻み付けないと安心できないのです。抜けきれぬ記者の性ゆえか。百年後、どこかのどなたかが薄汚れたノートをたまさか見つけ「短大学生のなすべきこと」を目にするかも知れません。はい、ジャーナリズムの本旨は記録することにあります。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

20日午前に新たな予算案採決と米下院議長、政府閉鎖

ビジネス

今週の利下げはきわどい判断=SF連銀総裁

ワールド

トランプ氏、EUに石油・ガス購入要求 「関税」警告

ワールド

ロシア中銀、予想外の金利据え置き 過去の引き締めが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 7
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 8
    「均等法第一世代」独身で昇進を続けた女性が役職定…
  • 9
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 10
    米電子偵察機「コブラボール」が日本海上空を連日飛…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 9
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中