最新記事

株の基礎知識

なぜアメリカの「雇用」に注目が集まるのか、投資をする人が見るべきポイントは?

2023年2月3日(金)08時40分
佐々木達也 ※かぶまどより転載
ウォール街

Rawpixel-iStock.

<日本の経済ニュースでもよく報じられるアメリカの雇用統計。2023年のアメリカ市場はどうなるのか。FRBの金融政策をも左右する「雇用」を読む>

アメリカの株価にもっとも影響を与える金融政策。2022年12月の米FOMC(連邦公開市場委員会)では、市場が想定していたよりも金融引き締めに前向きな"タカ派"であると受け止められたことから、株価は調整となりました。

その金融政策を運営するFRB(連邦準備制度理事会)のもっとも重要な2つの使命は、「雇用の最大化」と「物価の安定」であるとされています。そうしたことから、アメリカの「雇用」に注目が集まっています。

アメリカだけでなく世界のマーケットにも非常に大きな影響を与えるアメリカ「雇用」について詳しく見ていきます。

金融政策と雇用の関係

一般的に、景気が悪化するとFRBなどの中央銀行は金利を引き下げたり国債などを買い入れたりして、企業や個人がお金を調達しやすい環境を作ります(=金融緩和)。

これにより、企業は資金を設備投資に回したり、運転資金として事業を続けることができるようになり、経済活動が上向き、雇用にプラスとなります。

反対に、景気が良くなって物価が上がってきたり、企業の業績が良くなって雇用が増加し、人手が足りなくなってくると、中央銀行は金利を引き上げたり、国債などの買い入れを取りやめたりして、経済に回るお金の量を少なくするように働きかけます(=金融引き締め)。

その結果として経済の過熱が抑えられ、物価の上昇や雇用にブレーキがかかります。

世界的なインフレが進行するなか、現在、FRBは金融引き締めを行っています。アメリカの雇用はピーク時より一部鈍化しているものの、強い状態(人手不足)が続いています。しかし、金融を引き締め過ぎると雇用が冷えこみすぎてしまうため、舵取りが難しい局面となっています。

もっとも重要な「雇用統計」

アメリカの雇用を見る上でもっとも重要な経済指標は「雇用統計」です。

雇用統計は、労働省労働統計局(BLS)が毎月第一週の金曜日に、前月分を発表しています(参照: https://www.bls.gov/)。発表時間は、日本時間では夏時間の時期は21時30分、冬時間では22時30分です。

この雇用統計の調査データは、約6万世帯の家庭を調査員が直接ヒアリングする方法と、農業を除く全米約70万の事業者の給与支払い帳簿から調査する方法によって作成されます。

特に重視されるデータは「非農業部門の雇用者数」「失業率」「平均賃金の伸び率」です。

(参考記事)カリスマ投資家に学ぶ「勝てる投資」(1)ウォーレン・バフェットの投資手法

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中