なぜアメリカの「雇用」に注目が集まるのか、投資をする人が見るべきポイントは?
■非農業部門の雇用者数
「非農業部門の雇用者数」は、文字どおり農業を除いた企業の雇用者数で、自営業や経営者なども含まれません。農業を除く理由は、農業では季節など景気とは関係のない場面で一時的なアルバイトなどの雇用が発生することもあり、ノイズとなりやすいからです。
参照される数値は、雇用者数が前月比でどれだけ増えたか減ったかで判断されます。企業などの給与支払い帳簿をもとに算出されるため、「失業率」よりも速報性が高いとされています。
直近12月の非農業部門の雇用者数は前月比22.3万人増で、市場予想の20万人増を上回りました。
■失業率
「失業率」も、雇用の情勢を示す重要な指標として参照されます。「失業者÷労働力人口×100」で計算され、ここでいう失業者とは「現在仕事がないが、過去4週間以内に仕事を探していた人」と「レイオフ(一時帰休)中の人」が対象となります。
失業率は家庭のサンプル調査によって算出されるため、景気の変動の反映が他のデータよりも遅くなる性質があります。しかし、非農業部門の雇用者数などの速報性の高い数値は発表の翌月などで修正されることも多々ありますが、失業率は修正されにくく正確性が高い側面があります。
12月の失業率は3.5%となり、横ばいの予想に反して低下しています。
コロナ禍の影響が世界に広がり始めた2020年4月には、失業率は14.7%まで上昇し、1948年の統計開始以来、過去最悪の数値となりました。リーマン・ショックが発生したときでも、悪化時はおよそ10%でしたので、いかに急激に雇用環境が悪化したかがわかります。
しかし、その後のアメリカ経済は回復が進み、雇用環境も改善が続いて、2019年12月には失業率3.5%と約50年ぶりの水準まで低下しました。現在でも、その水準を若干下回る程度であることから、人手不足の環境が続いていることが示されています。
■平均賃金の伸び率
「平均賃金の伸び率」も重要な指標です。12月の民間企業の季節調整済みの平均時給は、前年同月比で4.6%増加したものの、伸び率は3月の5.6%をピークに減速しています。
しかし、過去の好景気時には4%程度、不況時には2%程度だったことを考えると、インフレや人手不足でアメリカの賃金上昇ペースは非常に高い水準であることがわかります。