最新記事

BOOKS

本を読むなら、自分の血肉とせよ。『三行で撃つ』著者の「抜き書き」読書術

2021年3月11日(木)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ノート

近藤康太郎氏の「抜き書き帳」 撮影:朴敦史

<「文章術はこれ一冊でじゅうぶん」と話題の『三行で撃つ』。名文記者として知られる近藤康太郎氏は本書で、独特の書棚整理術と読書術も紹介している。「書棚は自分の脳」――ではどのように整理し、強化するか>

本を「深く読みたい」と願う人は多い。そのための方法として、読んだ内容を記録しておくという手がある。

読書アプリ、レビューサイト、ブログと、記録メディアは多様化しているが、敢えて手帳に書き残してみるのはどうだろう。「手で書く」という肉体的な行為は、思わぬ効果をもたらしてくれる。

真似する読者が続出。「書棚整理」と「抜き書き」


背表紙が見えない本、横積みになっている本、それは本ではない。ゴミだ。(261ページ)

昨年末の発売から、文章を書く人たちの間で話題になっている実用書『三行で撃つ――〈善く、生きる〉ための文章塾』(CCCメディアハウス)の一節だ。名文記者として知られる朝日新聞編集委員・近藤康太郎氏が、文章をうまく書くための25の技術を書いた。

「撃たれ過ぎて瀕死」「文章術はこれ一冊でじゅうぶん」「実用書なのに泣いた」と、SNSで口コミが広がり、既に4刷。ライターやジャーナリストといった文章のプロから、noteやブログを書いている市井の表現者まで、書くことに向き合う広い層が共感の声を発信している。

それにしても、ゴミとは乱暴だが、どういうことなのか。


見栄えのことを言っているのではない。この節の主題である「抜き書き」と密接に関係するのだが、書棚は自分の脳なのだ。本の一冊一冊は、脳内を回る血液である。前後二段にして背表紙が見えなかったり、横積みにして下の本を取り出しにくくなっていたり、それは血液が循環していないことを意味する。血管が詰まっている。病気になる。(261ページ)

著者は決して読者を挑発しているわけではない。本を読むなら、しっかり読め、自分の血肉とせよと、まっすぐに訴えかけ、自らも実践している書棚整理術と読書術(抜き書き)を紹介している。

いま書棚が散らかっている人は、ぜひこの記事を参考にしていただきたい。書棚も頭も整理され、明日からの読書が変わるだろう。何より、いい文章を書き写す作業は、それだけでけっこう楽しいものだ。

人とのつながりを重視するより、孤独と向き合い、書く

文章術の本として『三行で撃つ』がユニークなのは、実用書らしく「書く技術」を伝える一方、「書くという行為」の根底にある「個人の心」にフォーカスした哲学的な視点にある。

読者は一冊を通して、文章をうまく書くための技術を身につけながら、同時に自分自身という実存と向き合い続けることになる。

常套句をやめること、擬音語・擬態語・流行語の扱い、説明しない技術、一人称の考え方ほか、即効性がある文章技術が25項目にわたって紹介されるが、なぜそうすべきなのか、人の心の在りようを論拠に説明していく。

例えば、読みにくい文章には「など」がやたらと多用されることがあるが、それはなぜか。書き手に自信がないからだ。書ききるということを放棄した結果、「など」でごまかすのだ、と説く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中