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本を読むなら、自分の血肉とせよ。『三行で撃つ』著者の「抜き書き」読書術

2021年3月11日(木)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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近藤康太郎氏の「抜き書き帳」 撮影:朴敦史

こうした、書き手の心を見透かすような指摘が読者を惹きつけている理由のようだが、なかでも独特の読書術に対する反響は大きい。

今、あまたの文章術実用書や文章講座は、バズる文章を書くために「SNSで発信し、人と器用につながれ」とアウトプットを重視する。しかし、『三行で撃つ』はそうした態度とは距離を置く。

孤独になること、人が見ているものを見ないようにすること、自分など大した存在ではないと受け入れること、自分を知るために書き続けること、ひいては〈善く、生きる〉ことの強さを説く。

外ばかりに向かわせがちなエネルギーを、個の内へといざなう。インプットは基礎体力、アウトプットの合わせ鏡と捉える。


ライターにとっての「書く」は、広い意味で「読む」も含まれている。書くことと読むことは、引き手と押し手だ。(中略)書くこととは、すなわち読むことでもある。いつ書くかという問題は、だから、いつ読むかという問題でもある。(251ページ)

具体的な読書法は次のとおりだ。「プロならば1日最低2時間」。

うち1時間を、①日本文学(古典)、②海外文学(古典)、③社会科学あるいは自然科学、④詩集(短歌・俳句)の4ジャンルから、それぞれ15分ずつ、そして、残りの1時間は好きなものを読む。

これを、無理にでも時間をつくって実践するべき贅沢な修行である、とし、「プロならば書棚には最低1000冊」は蔵書しておきたいという。

本書には書かれなかったが、著者はタイマーをセットして「15分読む(インプット)」と「1時間書く(アウトプット)」を延々とくり返すそうだ。

脳内ネットワークを可視化する書棚整理法

とはいえ、プロでもなければ、さすがに毎日2時間も読書をすることは難しいかもしれない。それでも、せっかく本を読むならば、ただ読むのではなく本当の意味で自分のものにしたいところだろう。

そのために有効なのが、冒頭に記した、書棚の整理と「抜き書き」である。

まず、なぜ背を向けて本が並んでいることが重要なのか。


本は書棚に乱雑に置くものではない。自分の好みで、自分にしか分からない分類方法で、置いているはずだ。その分類方法は、年を経るごとに変わってくる。関心領域が微妙に変化する。そのたびに、本の場所を入れ替える。

本は、脳内のネットワークになっているのだ。しかも、「自分にしか分からない」配置というところが肝心だ。(262ページ)

仮に仕事でレポートをまとめることになったとしよう。そのとき、会社に置いてある「資料A」、家の書棚にある「資料B」、取り寄せなければならない「資料C」と、ばらばらに存在している個別の資料をデスク上にひとまとめにすることから始めたという経験は、多くの人にあるだろう。

なぜか。作業効率を良くするためだ。『三行で撃つ』で推奨される書棚整理の考え方はそれに近い。

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