なぜ、機関投資家が買った株は上がるのか
機関投資家の動きをうまく活用するには
単に機関投資家に追随して銘柄を買うのでなく、「機関投資家がどのような見立てを持って投資しているのか」というところまでの理解をある程度つけることができれば、個人投資家にとってのメリットも大きい。
■機関投資家が描くストーリーを垣間見る
たとえば、アメリカの有名なアクティビスト・ファンドであるサード・ポイントは、2013年にソニー<6758>の株を保有し、2014年に売却。その後、2019年に再取得したものの、2020年8月に大量売却したことが明らかになった。
2度の株式保有時、同ファンドはソニーに対して、経営改革のため、一部事業の分離を要求している。そして、そうしたことが継続的に報道されるたびにソニーに買いが向かっていき、株価は長期的に上昇していった。
このように継続的な報道があると、機関投資家がきちんと理にかなった見立てのもとで株式投資をしていることがわかりやすい。株価上昇のストーリーを明確にイメージできるので、追随者である投資家にとっての安心材料にもなるだろう。
ほかにも、ファンダメンタルズ分析の知識を学べるとことも利点だ。機関投資家の考えるストーリーや投資先への提案内容などは、いわば「エキスパートのファンダメンタルズ分析&投資手法」だ。その内容を見て、理屈を知ることは、大きな学びになるのではないだろうか。
■なかには説得力に乏しいストーリーも......
一方で、なかには「説得力の弱いストーリー」のもとで株式投資をする機関投資家もいる。わかりやすい例は、2016年8月、アメリカの空売り機関投資家シトロン・リサーチがCYBERDYNE<7779>について公開した、いわゆる「うんこレポート」である。
シトロン・リサーチは主に売り方向の取引をする投資家で、株価下落によって利益を上げようとするファンドだ。同ファンドはサイバーダインに関して「株価は高すぎる」「株式市場を活用した錬金術の勝ち組企業」「UNKO(うんこ)」などと皮肉を交えて評価し、株価の一時的な下落を招いた。
しかし、同ファンドが公開したレポートには株初心者でも疑問に思うような、論理的におかしな点が多く見られ、説得力は高くはなかった。そのため、株価の下落は一時的なものにとどまり、同ファンドが思い描いたストーリーのようには展開しなかった。