最新記事

株の基礎知識

なぜ、機関投資家が買った株は上がるのか

2021年1月25日(月)17時05分
石津大希 ※株の窓口より転載

MMassel-iStock.

<機関投資家、特に海外の著名ファンドが大量保有した株式は、その後の株価が上がりやすい。そしてその情報は、個人投資家にとってもメリットがある>

機関投資家の大量保有で株価が上がる理由

日々動く株価は、どんなことが起こると大きく上下するのだろうか。企業が好決算を発表した時や、他社と資本業務提携を結んだ時など、大きな局面は数多く、「機関投資家が株式を取得した時」もそのひとつだ。

・大量保有の「5%ルール」

機関投資家による株式の大量保有は株価に影響を及ぼしやすいため、証券市場の透明性・公平性を高めるためのルールが定められている。それが「5%ルール」と呼ばれるものだ。


5%ルール
上場企業の発行済み株式数の5%超を持つ株主は、株式を取得することになった日から5日以内に内閣総理大臣に大量保有報告書を提出し、株式の保有状況を開示しなければならない

これは、株価が予想外の値動きをする可能性がある大量保有の情報を公開することで、一般投資家の保護を目的としている。たとえば、国内の投資信託がトヨタ自動車<7203>の株式を5%超取得した場合、投資信託がその件を開示して、世の投資家はその事実を知ることになるのだ。

注目すべきは、機関投資家、特に海外の著名ファンドなどが株式を取得したと知れ渡ると、投資先となった企業の株価がその後、大きく上昇することがあるということだ。もちろん「必ず」株価が上がるわけではないが、一体なぜ、そんなことが起こるのだろうか?

transaction_accounts_superbanner.jpg

■機関投資家の見立てをアテにした「追随の買い」

結論から言えば、多くの投資家は「機関投資家の見立て」をアテにしている、ということになる。なぜなら、機関投資家は何の目的もなしに企業の株式を買うことはないからだ。

機関投資家はリターンを効果的に上げるために上場企業を分析し、「あの事業は過小評価されているから、株価は今後もっと伸びるだろう」とか「あの事業を売却したら株価はさらに上がるだろう」といった将来のストーリーを見立てたうえで、株式を取得する。

つまり、5%ルールによる情報開示後に株価が上昇するのは、「機関投資家が買う株だから将来有望なのだろう」と信頼して、他の投資家も追随して株式を買いやすいからだと考えられる。

特にアクティビスト・ファンドなどが特定の株式を5%以上取得した際には、こういった傾向が強くなる。アクティビスト・ファンドとは、株式投資先の企業に対する株主提案や、経営陣との対話を積極的に行い、大株主の立場から企業の経営を改善していこうとするファンドである。

「株式を買って、そのまま待つ」というスタイルではなく、「買った後も積極的に経営をよくしていく」という動きが期待できるので、より追随の買いが向かいやすくなるというわけだ。

(参考記事)噂の「アクティビスト」の実態 企業に圧力をかける「物言う株主」の存在意義とは

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、4日に多国間協議 平和維持部隊派遣

ビジネス

米国株式市場=まちまち、トランプ関税発表控え

ワールド

カナダ・メキシコ首脳が電話会談、米貿易措置への対抗

ワールド

米政権、軍事装備品の輸出規制緩和を計画=情報筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中