最新記事

インタビュー

新卒1カ月で無職になった彼女を、Forbes選出の起業家に変えた1冊の本

2021年1月9日(土)12時10分
今井順


テキサス州のオースティンにある大学で、パブリックスピーキングやコミュニケーション学を学んでいたのですが、実際の授業よりも学外で起きていることに大きく影響を受けました。

オースティンはオラクルの本社が移転したりと、ポスト・シリコンバレーとして注目されている街なのですが、ここでは毎年「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」という、音楽祭や映画祭、インタラクティブ・フェスティバルを組み合わせたイベントが開催されています。

期間中には地元のカフェにIT企業のブースが設置されたりと、街中でテクノロジーを体験できるのですが、SXSWに触れたことで「テクノロジー業界で働きたい」と思うようになりました。

日本からは大手電機メーカーと広告代理店が出展していたのですが、有名大学に通っていたわけではないし、就活のためのインターンやアルバイトなどもしていなかったので、人気企業に入社するのはハードルが高いなと。でも、とにかくマスコミ業界に行けば少しでも夢に近付けるのではと思い、何とかテレビ番組の制作会社に入りました。

invu20210109-20yrsoldbook-2.jpg

ティナさんに会いたいから、分割払いでアメリカへ

夢と希望を持って上京した田中さんだが、そのテレビ番組の制作会社をわずか1カ月で辞めてしまう。徒弟制度の残る業界ならではの古い体質に「これは絶対に違う」と思い、悩む間もなく荷物をまとめて大阪に戻ったのだ。

その後しばらくは何をしようかと模索していたが、ある日「研修でシリコンバレーとスタンフォード大学に行ける」という、願ってもいないチャンスが訪れた。


1カ月で会社を辞めてしまうと、その後の再就職はとても難しい。だから起業しようと考えるようになり、大阪市が運営している起業家育成拠点の「大阪イノベーションハブ」に行き着いたのですが、そこが当時、シリコンバレーのツアーを実施していました。

研修の中にはスタンフォード大学に行くプログラムもあったので、「だったら、ティナ・シーリグさんに会いたい!」と思ったんです。そこで、ティナさんに「あなたの本にインスパイアされて、今度大阪からスタンフォード大学に行くのですが、授業を見せてくれませんか」とメールをしました。

そうしたら「この日のこの時間に来てください」という返事をいただいた。だから絶対に行くと決めたものの、お金がなかったので分割払いで参加しました(笑)。

現地で研修から1人外れて、指定された日にスタンフォード大学の教室に向かった田中さんは、ティナ・シーリグの授業に参加しただけでなく、実際に話をすることもできた。その経験は彼女にとって「めちゃくちゃ大きいもの」となり、その時に撮ったツーショット写真は今でも宝物だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中