新卒1カ月で無職になった彼女を、Forbes選出の起業家に変えた1冊の本
テキサス州のオースティンにある大学で、パブリックスピーキングやコミュニケーション学を学んでいたのですが、実際の授業よりも学外で起きていることに大きく影響を受けました。
オースティンはオラクルの本社が移転したりと、ポスト・シリコンバレーとして注目されている街なのですが、ここでは毎年「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」という、音楽祭や映画祭、インタラクティブ・フェスティバルを組み合わせたイベントが開催されています。
期間中には地元のカフェにIT企業のブースが設置されたりと、街中でテクノロジーを体験できるのですが、SXSWに触れたことで「テクノロジー業界で働きたい」と思うようになりました。
日本からは大手電機メーカーと広告代理店が出展していたのですが、有名大学に通っていたわけではないし、就活のためのインターンやアルバイトなどもしていなかったので、人気企業に入社するのはハードルが高いなと。でも、とにかくマスコミ業界に行けば少しでも夢に近付けるのではと思い、何とかテレビ番組の制作会社に入りました。
ティナさんに会いたいから、分割払いでアメリカへ
夢と希望を持って上京した田中さんだが、そのテレビ番組の制作会社をわずか1カ月で辞めてしまう。徒弟制度の残る業界ならではの古い体質に「これは絶対に違う」と思い、悩む間もなく荷物をまとめて大阪に戻ったのだ。
その後しばらくは何をしようかと模索していたが、ある日「研修でシリコンバレーとスタンフォード大学に行ける」という、願ってもいないチャンスが訪れた。
1カ月で会社を辞めてしまうと、その後の再就職はとても難しい。だから起業しようと考えるようになり、大阪市が運営している起業家育成拠点の「大阪イノベーションハブ」に行き着いたのですが、そこが当時、シリコンバレーのツアーを実施していました。
研修の中にはスタンフォード大学に行くプログラムもあったので、「だったら、ティナ・シーリグさんに会いたい!」と思ったんです。そこで、ティナさんに「あなたの本にインスパイアされて、今度大阪からスタンフォード大学に行くのですが、授業を見せてくれませんか」とメールをしました。
そうしたら「この日のこの時間に来てください」という返事をいただいた。だから絶対に行くと決めたものの、お金がなかったので分割払いで参加しました(笑)。
現地で研修から1人外れて、指定された日にスタンフォード大学の教室に向かった田中さんは、ティナ・シーリグの授業に参加しただけでなく、実際に話をすることもできた。その経験は彼女にとって「めちゃくちゃ大きいもの」となり、その時に撮ったツーショット写真は今でも宝物だ。