最新記事

インタビュー

新卒1カ月で無職になった彼女を、Forbes選出の起業家に変えた1冊の本

2021年1月9日(土)12時10分
今井順


ティナさんに会って感じたのは、もちろん運がいいというのもありますが、「これは自分が引き寄せた結果だ」ということ。20歳の時に漠然と憧れていたスタンフォード大学に行きたい気持ちは、勝手に諦めていたのだということにも気づきました。

でもティナさんに会ったことで、この本(新版)の第8章にある「幸運とは、小さな選択やささいな行動の積み重ねで、毎日少しずつ向上した結果、長期的に成功する確率が上がったこと」というのを実感したんです。

身近なチャンスをひとつひとつモノにして、可能性を広げていけば、できることがどんどん広がって目標に近付けるのだと思えるようになりました。だって、憧れのティナさんに会って、話をすることができたのだから。仕事も辞めて自信をなくしかけていた私にとって、自分が幸運を引き寄せられる人間だと確信し、自信を取り戻すきっかけとなりました。

夢がかなった自分を「運がいい」と言うが、「会いたい」とメールをして、何とかお金を工面してまでアメリカに行く覚悟があったから、憧れの人を引き寄せられたのだろう。

帰国後は研修を通して出合った、テクノロジー業界における女性のエンパワーメントグループを日本に導入する取り組みを始める。IT業界における女性の割合が少ないことへの問題意識を、仕事に結び付けたのだ。


日本のIT業界に女性の割合がとても少ないせいか、女性エンジニアのコミュニティはあっても法人としてのエンパワーメント組織がないことを知っていたので、「なんでやらないのだろう?」とずっと疑問に思っていました。

でも経験とスキルが少なく、いま起業しても(成功までに)時間がかかると思ったので、まずは女性に限定せず広くエンパワーメントしている組織である「みんなのコード」で仕事をしながら、起業を目指すことにしました。

invu20210109-20yrsoldbook-3.jpg

田中沙弥果/1991年生まれ、大阪府富田林市出身。2017年NPO法人みんなのコード入職。全国20都市以上の教育委員会と連携し、学校の先生がプログラミング教育を実施するための支援事業を推進。2019年に一般社団法人Waffle設立。IT分野のジェンダー格差を埋めるために、進路選択前の女子中高生向けIT教育や政策提言を実施している。情報経営イノベーション専門職大学客員教員

幸運を呼び込む方法が書かれた第8章が好き

「みんなのコード」とは、企業・行政と協力しながら公教育でのプログラミング教育を推進するNPOで、全国の学校現場の先生たちを支援している。

田中さんはプログラミング教育の重要性を訴えるシンポジウムの運営などに関わってきた。そんな中で、とりわけ女子中高生に向けたIT教育に力を入れていきたいと思い、より強く起業を考えるようになったという。


学校の先生を通じて取り組むよりも、もっとダイレクトに女子中高生をターゲットにするほうがいいのでは、という思いが日々募っていきました。

でも株式会社だったら子会社設立という流れになると思うんですが、NPOにはそのような仕組みがない。そこで、「みんなのコード」代表の利根川裕太氏にも相談に乗ってもらい、別の団体(Waffle)を立ち上げることにしたんです。彼には立ち上げた団体の理事も務めてもらっていて、感謝しかありません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EU、VWの中国生産EV向け関税撤廃を検討

ワールド

米、AUKUS審査完了 「強化する領域」特定と発表

ビジネス

ネトフリ、米ワーナー買収入札で最高額提示=関係筋

ビジネス

孫会長ら、ソフトバンクグループ株の保有比率34.7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中