最新記事

働き方

「ワーケーション」「二地域居住」定着のカギは地方のモビリティー──ウィズコロナ時代の新しい働き方に応じた交通インフラ整備を

2020年8月19日(水)11時50分
坊 美生子(ニッセイ基礎研究所)

マイカーを持たない来訪者の移動手段をどう確保するかがカギ HuyThoai-iStock

<コロナ禍でテレワークが広がり地方や観光地で仕事をこなせるようになったが、現地での移動手段がないという現実的課題も浮き彫りに。その解決策になり得る「自家用有償旅客運送」とは>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年8月4日付)からの転載です。

新型コロナウイルスの感染拡大は多くの企業にテレワークを広げ、ワーカーたちが働く場所を見直すきっかけになった。そこで注目が集まっているのが、地方の観光地で休暇を取りながら仕事もこなす「ワーケーション」や、都市と地方の両方に拠点を持って仕事をする「二地域居住」である。

これまで当然のように都市部のオフィスに通っていた人も、一部業務をテレワークでできるようになれば、観光地へパソコンと通信機器を持ち込んで、休暇を楽しみながら、従来通りに仕事をこなすことができる。あるいは、自然豊かな地方に生活拠点を増やし、週に数日は地方で働くことができる。満員電車のストレスから解放され、通勤時間を節約でき、リラックスした環境で仕事ができれば、作業効率が上がる人もいるだろう。さらに、地方で新しい交流が生まれれば、これまでにない発想もわいてくるかもしれない――。

ただし、この動きが広がり、定着するためには、乗り越えなければならない壁がある。それは、マイカーを持たずに来訪したワーカーたちの、地方における移動手段をどう確保するかという問題である。従来から大きな課題となってきた、交通インフラの問題である。

地方では、マイカーがないと生活が成り立たないケースが多い。電車や路線バスは、路線や本数が限定されており、こちらの都合に合わせた利用は難しい。それではタクシーはどうかというと、車両数も少なく、地方に出張して駅に着いたらタクシーがなくて困った、という経験をした人も多いだろう。採算が合わずに事業者が廃業したり、営業所が撤退したりした地域もある。

働き方を全面的に見直して地方へ移住するワーカーであれば、新たにマイカー購入を検討する人が多いかもしれないが、一時的に滞在するワーケーションや、仕事の都合に合わせて都市部と地方部を行き来する二地域居住の場合は、そうはいかない。どうしても、現地において移動手段が必要となる。

従来からIターンやUターンを誘致してきた地方の自治体にとっては、新型コロナの影響により、地方に深く関わる「関係人口」を増やすチャンスが生まれたが、このチャンスを生かして活性化に結び付けるためには、改めて地域の移動手段を確保、拡充し、モビリティー向上を目指さなければならない。

筆者は、その解決策の一つが、地方で多くの住民が所有しているマイカーを活用した「自家用有償旅客運送」制度だと考える。地元住民が登録ドライバーとなり、都市部からテレワークをするために訪れたワーカーらを対象に、マイカーで輸送サービスを行うというものである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中