株式投資で「必ずやらなければいけない」本当に大切なこと
なぜ人は損を抱えてしまうのか
2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者で行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した「プロスペクト理論」をご存じでしょうか。この理論が言っていることのひとつは、「人は、目の前に利益があると、それが減ることを回避しようとする」というものです。
先のAさんの場合、いったん利益が出ていたにもかかわらず、一転してマイナスになってしまいました。こういうとき、人は、最初からマイナスになった場合よりも不愉快を抱くそうです。
例えば、一度は決まっていた転職話が急に取り消しになったら......、好きな異性にプロポーズしてOKをもらえていたのに「やっぱり、ごめんなさい」と断られたら......。最初からNGだった場合よりも大きな心のダメージを受けることは理解できますよね。
そしてAさんのように、ぐずぐずと未練が残り、諦めきれずに引きずってしまいます。何とかして、当初得られていたはずの利益を取り戻したくて、損失が広がることには目をつぶり、そのまま株を持ち続けてしまいます。
そうこうしているうちに株価はさらに下がってしまい、もはやどうでもよくなって塩漬け株へ......。本来であれば、株価が下がれば下がるほど損は大きくなり、自分の大事なお金が減ってしまうはずなのに、だんだん損に対して鈍感になってしまうのです。
とくに株を始めた当初は、少しでも利益が出たことがうれしくて、マイナスに転じてからも「戻るはず」という期待から、なかなか株を手放すことができません。そうして塩漬け株だけが手元に残り、株式投資からも足が遠のいてしまいがちなのです。
本当に大切な「損切り」の話
人はかくも感情的な生き物で、なかなか損失を受け入れることができません。本来なら、期待外れで損が出た場合は、さっさと売却して損を確定してしまったほうが手持ち資金のダメージは少なくなります。さらにそれを他の株に回せば、お金を無駄なく上手に増やすことができるはずなのです。
損になった株はさっさと手放して損を確定する──これを「損切り」と言います。塩漬けとは対照的に、株式投資で「必ずやらなければいけないこと」のひとつです。
再びAさんにご登場願いましょう。AさんはG社株に10万円(株価1,000円×100株)の投資をしました。その後、株価は1,500円まで上昇しましたが、もっと上がることを期待したAさんは株を持ち続けます。しかし、その期待に反して株価は900円まで下落。
もしこのときAさんが損切りしていたら、どうなっていたでしょうか。
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