最新記事

インタビュー

出口治明「社会的責任を叫びながら、いざ不祥事になると平気で居座る経営者はおかしくありませんか」

2020年4月3日(金)11時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――なるほど。日本の経営者が寄付しないのは、ケチなわけではなく伝統がないと。

そうです。海外の経営者が寄付するのは、博愛精神や奉仕精神が特に強いわけではなく、キリスト教の伝統の問題です。地獄に落ちるのは誰だって嫌ですからね。

――とはいえ、巨額の富を得た経営者が社会に還元する姿勢がないと叩かれる風潮が日本でもあるのも現実です。寄付をすると立派みたいな社会通念はありますよね。

それは、どうでもいい話だと思うんですよ。重要なのは寄付する姿勢ではなく、本業を含めてどれだけ社会に貢献しているかではないでしょうか。

例えば、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の経営者は巨額の報酬をもらっていますが、社員の平均年収も、軽く1000万円を超えています。福利厚生を含めて従業員を大事にしていますよね。彼らは世界の人々のライフスタイルをがらりと変えた。従業員を大切にして、みんなを幸せにし、社会を便利にしているわけですから、ものすごい富を創出しています。

それを考えれば、経営者が別に100億円ぐらい報酬をもらったところで、何の問題もない話ですよ。しかも寄付もたくさんしている。

むしろ、日本の一部の経営者のように、普段は企業の社会的責任を叫びながらも、いざ不祥事を引き起こしても平気な顔をして居座り、なおかつ千万単位の報酬をもらっている方がおかしいとは思いませんか。社会に迷惑をかけている上に、報酬をもらっているわけですから。

経営者の巨額報酬や従業員との格差を問題視する声がありますが、経営者がたくさん給与をもらっていることが、いいのか悪いのかという問い自体がおかしいわけです。その経営者が、何をして、どういう結果を社会に及ぼしたのか、新たな付加価値を生み出したのかなどということを見て、それにふさわしい給与であれば、あとは何をしようが問題がないとは思いませんか。

――なるほど。それは、突き詰めれば、経営者でも一社員でも同じですね。

そうです。社員でも例えば何百億円も会社に利益をもたらしたのなら、その人の給与は何億円でもいいじゃないですか。プロ野球選手の年俸を見たらそうなっていますよね。監督よりも4番を打つ選手の方が、10倍もらっていても不思議ではありませんよね。むしろ、それが普通ですよ。

――誰も問題視しませんね。しかしながら、残念ながら企業社会では、それが当たり前には受け入れられません。

そういう世間のファクトを勉強していないからではないでしょうか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中