齋藤孝が実践する「知的生産(知的なインプット+アウトプット)」の秘密
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<アウトプットが重要と言われるが、何をインプットし、どうアウトプットすればいいかは難しい。メディアでも活躍する明治大学教授の齋藤孝氏が「すぐにアウトプットする3つの方法」「知的な素材集めのための6つの方法」など具体的なコツを伝授する>
出版界はいま「アウトプット流行り」だ。結果を出すにはアウトプットが重要だと謳うビジネス書が、ここ数年、多く出版されてきた。
ビジネス書のトレンドに詳しい書籍要約サービス「フライヤー」のプロモーションマネージャー、井手琢人氏は「18年3月に発売されてベストセラーになった『1分で話せ』以降、アウトプット関連書籍が増えている」と、日経クロストレンドの取材に答えている。
「パンパンになった知識や情報を具体的にどう生かしたらいいかと考える人が多いようだ」
実際に得た知識をどうアウトプットしていいか分からない――。確かに、そういう人は今でも多そうだ。
そもそも、膨大な情報の中から、どのように「知的な情報」をインプットするかが分からない、という声も聞かれる。インプットとアウトプットはセットだし、インプットする情報が何でもいいわけでないことは、誰もが分かっている。
仕事をする上でも、勉強をする上でも欠かすことのできない、インプットとアウトプット。それらを自在に操り、成果を挙げ続けているのが、ベストセラー作家、文化人としてメディアで活躍する明治大学教授の齋藤孝氏だ。
インプット力・アウトプット力について教えを乞う相手として、これ以上ない人物だろう。
その齋藤氏が日々、多くの情報からどのように知的な情報をインプットし、どのように知的なアウトプットに変えているかを著したのが、新刊『知的生産力』(CCCメディアハウス)。齋藤氏自身の実践を基に、今の時代――氏曰く「インプットとアウトプットが入り乱れる時代」――に必要な「知力」の上げ方を具体的に記した1冊だ。
知識を役立てられないのは、アウトプットの回路がないから
そもそも、本書の書名に掲げられた「知的生産」とはどういうものだろうか。
齋藤氏によると、知的生産とは「知的情報を生産すること」であり、新しさ、意外性、気づきを分かりやすく伝えることだという。そして、そのアウトプットに触れた人が、満足できる、勉強になると判断できる情報であることが大切だ。
アウトプットを知的にするために必要なのは、知的な素材、題材、テーマを選ぶこと。
例えば、職場の朝礼のスピーチで、自分の身の周りの出来事をとりとめもなく話したところで、それを聞いた人は「勉強になった」とは思わないだろう。
しかし、スピーチの題材の知的レベル、教養レベルが高ければ、伝え方がつたなかったとしても、アウトプットを知的にすることができる。知的生産の基本は、インプットした知的な情報をアレンジして、分かりやすくアウトプットすることなのだ。
そうは言っても、「学んだ知識を役立てることができない」「本を読んでもすぐに忘れてしまう」といった経験をしている人は少なくないだろう。齋藤氏によれば、その原因のひとつは「アウトプットの回路ができていない」ことにある。
インプットした情報は、「読む、書く(描く)、話す」ことによって、血肉に変わる。