世界の株式市場をにぎわす「逆イールド」は景気後退の予兆──とは限らない
■逆イールド発生後の日経平均株価の推移
同じ期間における日経平均株価の動きも確認しておきましょう。どの期間も、バブル崩壊や金融危機など日本固有の問題があったため、アメリカ株とは対照的な動きになっています。
このことからわかるのは、アメリカ市場の動向が必ずしも直接的に日本市場を動かすわけではない、ということです。今回の逆イールド発生によってアメリカが景気後退局面に入ったとしても、日本株がどうなるかは別の様々な要因にも影響を受けるはずです。
アルゴリズムが株式市場を揺らす
2019年8月の逆イールド発生時には、アメリカ市場は800ドルの大幅下落となりましたが、この主な要因はアルゴリズム取引だといわれています。アルゴリズム取引とは、コンピューターが株価やニュースなどに応じて自動的に売買注文を繰り返す取引のことです。
逆イールドに対するマーケットの関心が高いため、2年債と10年債の逆イールド発生を売りのトリガーにしていたアルゴリズムが多かったと考えられます。指標発表や売買シグナルに合わせて大きくポジションを傾ける「ディレクショナル(方向)型」と呼ばれるアルゴリズム戦略です。
個人投資家としては、「逆イールドが発生したからといってすぐにアメリカ市場が下落トレンドになるわけではないものの、アルゴリズム取引によって瞬間的に大きく下がることはある」と念頭に置いておく必要があります。また、逆イールドが発生したことで株価の変動率(ボラティリティ)が高まっている点にも警戒が必要でしょう。
しかしながら、瞬間的なニュースや変動に慌てないためには、事象の背景や過去の例を含めた根本的な理解を心がけることが重要です。
[筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
※9月17日号(9月10日発売)は、「顔認証の最前線」特集。生活を安全で便利にする新ツールか、独裁政権の道具か――。日常生活からビジネス、安全保障まで、日本人が知らない顔認証技術のメリットとリスクを徹底レポート。顔認証の最先端を行く中国の語られざる側面も明かす。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら