世界の株式市場をにぎわす「逆イールド」は景気後退の予兆──とは限らない
■逆イールドとアメリカ景気の関係
逆イールドが、株式市場でここまで注目されていることには理由があります。
アメリカでは1988年以降に3度、10年債と2年債の逆イールドが起きているのですが、いずれもその1~2年後に景気後退しているのです。そのため、2019年8月の逆イールドも「景気後退のサインが点灯した」とみなす声が多くありました。
ここでいう景気後退とは、実質国内総生産(GDP)が連続してマイナスになるなど、経済活動が縮小・衰退する状態です。前回のアメリカの景気後退局面は、リーマンショックを含む2007年12月~2009年6月でした。その後は回復し、2019年7月には史上最長となる11年目の景気拡大期に入っていました。
しかし、その1か月後の8月に逆イールドが発生。2018年に新興国を中心に世界経済が減速した中でも「アメリカ1強」の状態が続いていましたが、そのアメリカ経済にも後退の兆しが出始めたことを逆イールドが示唆している......と考えられるのです。
逆イールドが株式市場に与える影響
過去の例を見れば、逆イールドが、景気後退局面の前に高い確率で起こっていることは確かです。しかしながら、逆イールド発生後すぐに株式市場が下落トレンドになっているわけではありません。
■逆イールド発生後のダウ平均の推移
直近3回の逆イールド発生から景気後退入りまでの期間におけるダウ平均の値動きを見てみましょう。実は、逆イールドが発生して景気後退局面に入るまで、いずれもダウは上昇しているのです。
あくまでも過去の例ではありますが、これを見る限りでは、逆イールドが発生したからといって直ちにアメリカ市場が下落相場になると考える理由はなさそうです。