最新記事

投資の基礎知識

世界の株式市場をにぎわす「逆イールド」は景気後退の予兆──とは限らない

2019年9月11日(水)18時20分
山下耕太郎 ※株の窓口より転載

■逆イールドとアメリカ景気の関係

逆イールドが、株式市場でここまで注目されていることには理由があります。

アメリカでは1988年以降に3度、10年債と2年債の逆イールドが起きているのですが、いずれもその1~2年後に景気後退しているのです。そのため、2019年8月の逆イールドも「景気後退のサインが点灯した」とみなす声が多くありました。

ここでいう景気後退とは、実質国内総生産(GDP)が連続してマイナスになるなど、経済活動が縮小・衰退する状態です。前回のアメリカの景気後退局面は、リーマンショックを含む2007年12月~2009年6月でした。その後は回復し、2019年7月には史上最長となる11年目の景気拡大期に入っていました。

しかし、その1か月後の8月に逆イールドが発生。2018年に新興国を中心に世界経済が減速した中でも「アメリカ1強」の状態が続いていましたが、そのアメリカ経済にも後退の兆しが出始めたことを逆イールドが示唆している......と考えられるのです。

逆イールドが株式市場に与える影響

過去の例を見れば、逆イールドが、景気後退局面の前に高い確率で起こっていることは確かです。しかしながら、逆イールド発生後すぐに株式市場が下落トレンドになっているわけではありません。

■逆イールド発生後のダウ平均の推移

直近3回の逆イールド発生から景気後退入りまでの期間におけるダウ平均の値動きを見てみましょう。実は、逆イールドが発生して景気後退局面に入るまで、いずれもダウは上昇しているのです。

kabumado190911-chart2.pngkabumado190911-chart3.pngkabumado190911-chart4.png

(Chart by TradingView

あくまでも過去の例ではありますが、これを見る限りでは、逆イールドが発生したからといって直ちにアメリカ市場が下落相場になると考える理由はなさそうです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中