一企業・一業界の「特殊な経験」だけの人に、社会人教授は難しい
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<グローバル化・IT化に対応していくために、大学には社会人教授が必要だ。だが、大学教授としての資質と資格に不適格な者も多い。「優れた社会人教授」とは何か>
大学進学率が50%を超えたわが国の大学は、ユニバーサル段階、すなわち、学びを求めるあまねくすべての人に向けた教育機関として、学問の探究とともに多様な教育サービスを提供することが求められる段階に入った。
選り好みしなければ誰でも大学に入れる「大学全入時代」の到来の一方で、少子化による「大学氷河期時代」は大学の経営を圧迫し、閉校に追い込まれる私立大学も現れた。
わが国を取り巻くグローバル化やIT化の進展は、大学も例外ではない。大学は新しい時代にどのように対応すればよいのであろうか。筆者は主に次の3点を指摘したい。
1)優れた社会人教授を大学に迎え入れることで、大学の教育・研究を活性化し、海外の著名教授を招聘して、大学をグローバル化すること。
2)社会経験だけで、定年退職後に大学に転職する定年余生型の不適格大学教授を排し、優れた社会人教授を育成してゆくこと。
3)社会人教授の採用に際しては、学位(博士号)と教育・研究業績を重視すること。
専門学校的な「学びの場」が認められたわけではない
大学は社会における知の集積拠点だが、「象牙の塔」であってはならない。そこで行われる研究は社会にとって有用なものでなければ大学の存在価値は無いだろう。
研究成果を社会に還元し、あるいは、大学生を優れた社会人として送り出す義務があるのである。このような社会に貢献する大学の姿の1つとして「産学共同路線」がある。産業界が大学を資金面で支援し、大学はその産業に有用な研究を行い技術面で貢献するというものである。
前回「社会人教授が急増しているのはなぜか──転換期の大学教育」で述べたように、一昨年5月、文部科学省は55年ぶりに学校教育法の一部を改正し、専門職大学・専門職短期大学の設置と両大学における専門職学科の設置が行えるようになった。
これは実践的な職業教育を高等教育機関でも実施できるようになったことを示したものである点で、新たな「産学共同路線」といってもよいだろう。こうした法律の改正により、専門職大学の申請を17の学校法人が行ったが、実は2019年に開設されるのは1校のみである。
他の16の専門職大学は認可されず、保留、ないし、再申請となったのである(朝日新聞 2018年10月5日)。これは学校法人側にカリキュラム編成や大学教員としての資格において問題があったからだ。学校法人が安易な実学教育の大学づくりを行おうとした結果である。
このことは何を意味するのだろうか。つまり、大学は実践的な職業教育という専門学校的な「学びの場」ではなく、あくまでも大学という高等教育機関としての実学教育なのである。「実践的教育」には、学問的な知識の裏付けが必要なのだ。