日本のビジネススクールは行く価値があるか?
さらに、2000年に専門職大学院としての国際企業戦略研究科が一橋大学で最初の入学生を迎え、名古屋商科大学、青山学院大学と、ビジネススクールが次々とつくられることになった。その他にも早稲田大学、明治大学、法政大学、中央大学といったように、まさにビジネススクールの百花繚乱である。
これはすでに述べたように、企業活動のグローバル化の進展に対応した国際的人材の育成という大学側の経営上の思惑でもある。
ただし、欧米のビジネススクールはグローバルな企業戦略を基本としたカリキュラム体系であるが、日本の場合、グローバルなビジネス環境を参考にしながらも日本企業の経営風土を軸とした教育を行っているのが日本型のビジネススクールの特徴である。
多元的なビジネス価値を基盤とした欧米のビジネススクールと、一元的なビジネス価値を教育の基本としている日本のビジネススクール。いずれに学ぶ価値があるだろうか。
過渡期のビジネススクール――高等職業専門学校か、大学院か
英国の有力高等教育評価機関、クアクアレリ・シモンズ(QS)は毎年、世界のビジネススク-ルのランキングを発表しているが、最新の「QS Global MBA Rankings 2018」によれば、1位ハーバード、2位INSEAD、3位HEC パリ、4位スタンフォード、5位ロンドン・ビジネススクールとなっており、アジア勢では、上海(中国)のCEIBSが28位、香港大学が38位、シンガポールの南洋理工大学が42位となっている。
日本のビジネススクールは141-150位に早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)、151-200位に名古屋商科大学ビジネススクールがやっと登場している。慶應義塾大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)が登場していないのは不可思議だが、本来なら早稲田とはほぼ同等以上にランクインされるはずである。
こうした大学ランキングは、世界でさまざまな機関が毎年異なる基準で発表しているので、これが信頼できるものとは正確にはいえないが、総じて、日本のビジネススクールは欧米の超一流のビジネススクールよりも評価されていないということは確かだ。その大きな要因の1つは、日本のビジネススクールは教育と研究の質が相対的に低いことにある。
例えば、欧米の場合、ビジネススクールというMBA(修士課程)のレベルであっても、正規の専任教員はすべて博士号を保有している。企業経験があるからといって、ビジネススクールの教員として採用しているのは日本のビジネススクールだけだ。これではまるでビジネススキルを身につけさせるための高等職業専門学校のレベルである。
ちなみに、日本のビジネススクールでトップクラスと称されている慶應義塾大学ビジネススクールと早稲田大学ビジネススクールの教員の学位取得を比較してみると、(1)慶應義塾大学の専任教員(27名)がすべて博士学位(海外・国内の大学院)を保有しているのに対して、(2)早稲田大学の場合、専任教員49名のうち博士学位取得者は37名で、博士号取得率は約75%である。