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日本のビジネススクールは行く価値があるか?

2018年3月20日(火)15時25分
松野 弘(千葉商科大学人間社会学部教授)

この背景には、米国のビジネス界では、企業の経営幹部にビジネススクール出身者が多いこと、そうした人々が成果をもたらしているということから、ビジネススクールに対する社会的評価が高いことが理由として挙げられる。と同時に、米国の有名ビジネススクール出身者には、約1400万~2000万円程度の初年度年収が保証されていることも大きい。

アメリカのビジネスパーソンがなぜ、高い授業料(2年間で750万~850万円前後、他の費用を含めると1000万円以上の負担)を払ってまでビジネススクールへ行くかといえば、ビジネススクール、とりわけ有名なビジネススクール――例えば、ペンルベニア大学ウォートンスクール、スタンフォード大学経営大学院、ハーバード大学経営大学院など――でMBAを取得すれば、就職先の企業から高額な初任給を得られるからだ。

具体的には、1位 ハーバード大学経営大学院17万7500ドル(1952万円)、2位 ペンシルベニア大学ウォートンスクール14万6068ドル(1606万円)、3位 シカゴ大学ブース経営大学院14万5750ドル(1603万円)となっている(日本円は1ドル=110円で換算、出典:ZUUO online編集部、2016年)。

それゆえに、米国では、ビジネススクールの高い授業料を払っても十分にペイする報酬を獲得できるので、ビジネススクールでMBAを取得することは、きわめて教育投資効果が高いのである。

他方、日本の多くの企業ではたとえ国内外の著名なビジネススクールを修了しても、待遇は他の社員と同じで、高い報酬は約束されていないのが現状である。というのも、社員教育は社内研修でという伝統的な日本的経営の手法が日本の企業に根付いているからである。

そのため、こうしたビジネススクールの出身者は、帰国して元の企業に戻っても、数年後には高報酬の外資系ビジネスコンサルティング企業(ボストンコルサルティングやマッキンゼーの日本支社等)や外資系企業の日本支社幹部に転職するのが常である。

というのも、いくら欧米のビジネススク-ルでMBAを取得しても地位も給料も上がらないからだ。こうした事情の背景をみると、問題は日本的経営方式にどっぷり漬かり、年功序列方式で社員を処遇している日本の企業が大半だというところにある。

百花繚乱となった日本のビジネスクールだが

日本の企業は経営者と従業員の運命共同体として見事に戦後復興を遂げ、世界有数の経済大国へと発展してきた。しかし、経済のグローバル化に伴い、グローバルスタンダードのマネジメント・スタイルを採用しないと世界の企業と競争できなくなってきたという深刻なビジネス環境の変化がある。

そこで注目されたのが米国流のビジネス活動を推進していくためのメソッドであり、ビジネススクール等の高等教育機関を通じて、ビジネス戦略等を身につけなければならないという現実的な要請が日本の企業に求められた。

日本のビジネススクールの先駆けは、1978年に慶應義塾大学が「和製MBA」を掲げた大学院経営管理研究科である。

その後、1988年に新潟に財界の要請で設立された国際大学大学院国際経営学研究科、1989年に夜間の社会人向けビジネススクールとして設立された筑波大学大学院ビジネス科学研究科、同様に神戸大学にも1989年、大学院経営学研究科に社会人MBAプログラムが設置された。

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