最新記事
退職

GW明けに退職代行の利用が急増する!?ブラック企業だけだはない、ホワイト企業でも続発する背景とは

2025年4月28日(月)09時16分
横山 信弘(経営コラムニスト)*PRESIDENT Onlineからの転載

使われるのは「ブラック企業」だけではない

退職代行というと、使われるのは「パワハラ体質の企業」「残業の多い会社」といった負のイメージが先行する。しかし現実はそう単純ではない。

意外なことに、社員教育に熱心で人間関係の良好な企業でも退職代行が使われるケースがあるのだ。なぜだろうか?


たとえば熱心な上司との関係が良好であるがゆえに、退職の意思を伝えられないことがある。熱心な指導を受け、期待にこたえられないことへの後ろめたさから、直接の対話を避けてしまうというのだ。同期との絆が強い職場でも、裏切り者になりたくないという思いから、退職代行に頼るケースもある。

どちらも一見すると健全な職場に思える。しかし、そのような職場だからこそ、退職代行のニーズが生まれてしまう。「ブラック企業だから退職代行を使うのだ」という単純な構図では語れない実態があることを、企業は理解しておく必要があるだろう。

「レッテル」を貼られてしまう可能性

また、働く人の価値観の変化も退職代行サービスの利用が増えている要因だ。

しかし、退職代行は利用する人にとってメリットばかりではないだろう。当然、デメリットもあるのではないか。

精神的な負担を軽減できることは、利用者の大きなメリットだ。直接の対話による心労を避け、スムーズに次のキャリアへ移行できる。

では、デメリットは何か? 最も大きいのは、今後のキャリアにおける評価への影響だろう。退職代行をよく利用される企業も特定されてしまうだろうが、その逆もしかり。とくに狭い業界であれば、瞬く間に伝播する。

「履歴書を見てピン! ときた。退職代行を使ってA社を辞めた営業は、この人だ」
「A社はブラックでもないのに、退職代行を使って辞めるなんて......」

正当な理由があるのかもしれないが、

・A社を辞めた営業
・退職代行サービスを使ってA社を辞めた営業

とでは、あまりにも印象が違う。面接する前から、レッテルを貼られてしまう可能性はゼロではないだろう。転職市場では「退職時の対応」も重要な評価ポイントとなるからだ。

たとえ退職代行の利用歴がレファレンスされなくとも、その経験によって「逃げグセ」がついてしまうこともある。常識的に考えて「退職代行を使うぐらい切羽詰まった状態」だったのか。それとも、そこまででもなかったのか。

礼節を重んじるなら、お世話になった上司や先輩に自分の口で退職意向を伝えるべきなのが、一般的な常識だ。一度「逃げグセ」がついてしまうと、ミスや失敗など、都合の悪いことを報告できない人になってしまう可能性もある。

デメリットについてもよく理解したうえで利用したほうがいいだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、中立金利以下への利下げも 関税で物価下押し

ワールド

メルツ次期独首相、トランプ氏に「関税ゼロ」を提案へ

ワールド

スペイン全土で大規模停電、市民生活混乱 ポルトガル

ワールド

米コロラド州のナイトクラブで不法移民114人拘束、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中