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日本の1人当たりGDPは先進国平均の74.6%に...財政出動と減税では日本経済は復活しない

2025年3月13日(木)13時11分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)*東洋経済オンラインからの転載

なぜ、減税を行うことで企業が突然賃上げを行い、これまで内部留保に回していた資金の使い方を変えると期待できるのでしょうか。

企業の立場からすれば、減税によって財政がさらに悪化すれば、物価上昇に対する対応として「政府が減税してくれるのだから、自分たちは賃上げをする必要がない」と考える可能性のほうがはるかに高いのです。

結果として、利益をさらに増やし、内部留保を増大させる行動を取るでしょう。

「生産性向上」しか手段はない

では、どうすればよいのでしょうか。


結局、経済成長は「人口増加」と「生産性向上」の2つの要素から成り立っています。歴史的に見ても、この2要素で経済成長を半分ずつの割合で説明できます。

日本は人口が減少しているため、経済成長のためには「生産性向上」しか手段がありません。生産性は主にイノベーションと設備投資によって決まるため、政府は徹底的にこれらを促進するしかありません。

イノベーションがなければ、減税や有効需要の拡大を行っても、経済は成長せず、単なるインフレを引き起こすだけです。

人口が減少するなかでは、生産性のより高い業種・企業に資源を徐々に集約し、輸出もアメリカだけでなく多方面に拡大し、徹底的に増やすべきです。

日本は農業、都市構造、中小企業、病院に至るまで「分散型経済」です。分散型経済は人口増加時代において雇用を増やし、経済成長に貢献します。一方、分散型経済の特徴でもある生産性が極めて低いという問題は、人口増加によって隠されていました。

人口減少時代には、経済成長には生産性向上しか手段がないため、分散型経済は経済の低迷を招きます。したがって、経済産業省は、減少する資源をどの業種、どの規模の企業にどう配分するのかを戦略的に考え、税制や企業優遇策を全面的に見直すべきです。

究極的には、私は経済学の基本に立ち返り、賃金を引き上げることで人件費が上昇し、それに対応するために企業がイノベーションを起こし、設備投資を進めるべきだと真剣に考えています。

したがって、石破政権が最近発表した「2029年までに最低賃金を1500円に引き上げる」という政策は、極めて意義のあるものだと考えます。

最低賃金はすでに初任給に近い水準に達しています。そのため、最低賃金の引き上げはアルバイトやパート労働者だけでなく、正社員の賃上げにも大きく貢献することになります。

これにより、経済全体への影響はますます拡大しています。特に、若年層の給与が増えることで、消費性向が高い層に資金が回り、経済の活性化につながるでしょう。

私は、多くの日本企業が、高い勤労意識を持つ日本の労働者を低賃金で酷使し、付加価値の低いビジネスモデルを続けていると分析しています。こうした企業を支えるために、人手不足の状況下で労働者を犠牲にし、貧困に追い込むことに何のメリットもないと考えます。

賃金を段階的に引き上げることで、こうした企業の経営者に対し、生産性向上への意識改革を促す必要があります。

減税ではなく、賃上げこそが日本経済を救うのです。

newsweekjp20250312072502-89399b9f5054955a1f73921e1547fdf43ba25077.jpgデービッド・アトキンソン『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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