トランプ「買収は望まないが、投資は大好きだ」USスチール問題の裏側
日鉄による149億ドルの買収案は1月3日、バイデン前大統領によって阻止された。
外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は数カ月にわたり審査を続けたが、合意に達することができず、この問題を大統領の決定に委ねた。
バイデンの買収中止命令は、30日以内に買収計画の放棄を義務付けている。日鉄とUSスチールは1月6日、この決定に異議を唱えて連邦控訴裁判所に訴訟を起こした。
伏兵も現れた。アクティビスト(別名「物言う株主」)の米投資会社アンコラ・ホールディングスは1月27日、日鉄のUSスチール買収案の撤回を要求。USスチールの株式を少数取得した上で、経営陣の刷新を求めた。
アンコラによれば、USスチールの経営陣は日鉄の買収が成功すれば1億ドル以上の利益を得る。USスチールは23年、同業のクリーブランド・クリフスの買収案を拒否し、日鉄の提案を支持している。
一方、日鉄のアドバイザーを務めるマイク・ポンペオ元国務長官は、「この取引はUSスチールの事業と生産能力を強化し、労働者と地域社会に利益をもたらし、米鉄鋼産業の競争力を強化するものだ」とウォール・ストリート・ジャーナル紙で主張した。
ポンペオの言うことは日本から見れば正論だ。しかし、トランプと関係が悪化したポンペオを、日鉄が昨年アドバイザーとして起用した判断は疑問視されてもいる。