中国「ディープシーク」創業者・梁文鋒氏が目指すのは「中国の技術革新」...「チャレンジ精神が原動力」
こうした発言からは、中国のハイテク産業が基本的な研究開発の突破口を開く上で、不足しているのは資金ではなく自信だ、との梁氏が考えが伝わってくる。
チャレンジ精神が原動力
梁氏はこのインタビューで「過去30年間(中国のハイテク産業は)収益化だけを強調し、イノベーションは無視してきた。イノベーションはビジネスのほか、好奇心や創造意欲にけん引される」と説明した。
ディープシークは、オープンAIと異なり、全てのモデルをオープンソース方式にすることを決めている。基本コードは開発者なら誰でも利用可能で、自由に修正できる。
米ハイテク産業関係者らは、カリフォルニア州のシリコンバレーが中国勢に対して優位を維持してきた理由の1つとしてこのオープンソースの文化を挙げてきた。梁氏もその姿勢を受け入れたことがうかがえる。
梁氏は「オープンAIがソースを非公開にしても、他社のキャッチアップを止めることは不可能だ。オープンソースはビジネス慣行というよりも文化的慣行で、これを採用する企業はソフトパワーを手に入れる」と言及している。
1980年代から90年代にかけて中国で先駆けて資本市場経済を取り入れてきた南部広東省で育った梁氏は、勉強よりも起業を重視する人々に囲まれていたが、自身は学術志向が強かった。
17歳で名門の浙江大学に入ると電気通信工学を専攻。2010年に情報通信工学の修士号を取得した。
15年には複雑な数式のアルゴリズムを利用するクオンツ投資のヘッジファンドを共同で創業。21年末にはファンドの資産を1000億元(137億9000万ドル)余りにまで膨らませた。
ところがこのファンドは23年4月、活動を投資業界の外に広げ、汎用AI(AGI)開発に資源を集中すると発表。その翌月にディープシークが誕生した。