最新記事
アメリカ景気

トランプ景気はもって1年、世界経済の低迷と失政で成長にブレーキの恐れ

U.S.ECONOMY

2024年12月25日(水)12時29分
ケネス・ロゴフ(ハーバード大学経済学教授)

トランプの復活に関しては、アメリカの大学と主流派メディアにも責任がある。民主党への建設的な批判を行わず、党内左派が党の未来を決める状況をつくり出したのだ。学術的な議論から保守的な主張が次第に排除されていき、いわゆるキャンセル・カルチャーが長年野放しにされてきたことで、民主党は一般の有権者と乖離してしまった。

大学のキャンパスや主流派メディアでもっとバランスの取れた議論がなされれば、民主・共和両党の政治家が経済政策に関して、正確な知識に基づく中道主義的な路線を取るよう促せるかもしれない。


アメリカ経済に2度目の「トランプ・ブーム」は訪れるのか。その可能性はあるが、今回は前回ほど簡単にはいかないだろう。

バイデン政権から堅調な経済を引き継ぎ、当座の景気刺激策を実行すれば、最初の1年は経済が急成長するかもしれない。しかし、勢いは長続きしない可能性がある。

世界経済がつまずき、地政学的な緊張が高まっている状況で、アメリカ経済が試練にさらされることは避けられない。新しい政権で経験の乏しい面々が多く登用されれば、政権初期に直面する経済的な難局を乗り切ることは簡単でないだろう。

もしそうなれば、好景気が実現したとしてもすぐに終わりを迎えるだろう。ドナルド・トランプの政権で初めて、感染症のパンデミック以外の理由による景気後退を経験することになるかもしれない。

©Project Syndicate


newsweekjp20241225014656-eae3df5251c152a1cc9cb7c49221be81d158af70.jpgケネス・ロゴフ
KENNETH ROGOFF
元IMFチーフエコノミスト。ハーバード大学教授(経済学)。著書に『国家は破綻する──金融危機の800年』(共著)など。

202412310107issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月31日/2025年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2025」特集。トランプ2.0/AI/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済…[PLUS]WHO’S NEXT――2025年の世界を読む

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ビル・ゲイツ氏「面会を希望」、トランプ氏が明らかに

ビジネス

米11月モノの貿易赤字、1029億ドルに拡大=商務

ワールド

北朝鮮兵、先週1000人死傷 ロシア西部クルスク州

ワールド

イエメン国際空港空爆で重症の国連職員、ヨルダンに移
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健康食品」もリスク要因に【研究者に聞く】
  • 4
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 5
    ロシア軍の「重要」飛行場を夜間に襲撃...ウクライナ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    地下鉄で火をつけられた女性を「誰も助けず携帯で撮…
  • 8
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    「不法移民の公開処刑」を動画で再現...波紋を呼ぶ過…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 10
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中