最新記事
BOOKS

【私らしく書く】「何か書いてみよう」と思うあなたへ...人気エッセイストが伝える書くことの救い

2024年11月1日(金)16時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

書くことに集中すると悲しさを忘れる

書くという作業は、ほんの小さなおもしろさに全神経を傾けて、観察して、ブーストして出力することです。誇張するという意味ではなく、おもしろさが際立つような目線を持つという意味です。

たったひとつのおもしろさを表現するために、その前後には、何が起きたのかを説明する文章がつくわけです。その、わずかなおもしろさの前後左右に、文章をくっつけることでエッセイが成り立ちます。

そうやって書いているうちに、おもしろいことの前後左右に存在する悲惨なことがらがどうでも良くなってくるんです。そう、文章を書いていると、楽しくなってくるのです。自分が潤ってくるんです。

人のためには書いていないのかもしれませんね。自分の現実をなんとかいい方向にねじ曲げるために、自分にいいように解釈して、仕事に結びつけている。

介護を無償の仕事と考えると、状況は違ってきます。家族の介護が悲惨に思えてしまうのは、無償の仕事だという考えが根強くあるからだと思います。私はその無償というところから、なんとか捻り出そうとしています。わかりやすく言えば、本を書くことで介護という行いに賃金を与えているのです。書いていることで自分が救われていると思います。

何でも書いているわけではない

エッセイは身の回りに起きた出来事をさらりと書けばよいので楽なのではないか......そう聞かれることが多すぎて、最近は「そうです」と答える機会が増えましたが、何かを書くことが楽なわけがありません。

エッセイは、身の回りで起きたことを題材にして書くのは間違いではありませんが、どこまで書くのか、誰について書くのか、何が真実なのかのさじ加減がとても難しいものです。大事なのは、「いかに多くの情報を開示せずに、多く書くか」という点です。

それはどうしたらいいのでしょうか。私は、「解像度を上げる」ことが重要だと思っています。本当にわずかな物事であっても、解像度を上げて見つめることによって、様々な側面が見えてきます。

どんな気持ちになったのか、その時、周囲には誰がいたのか、どんな天気だったのか......そういった細かな情報を丁寧に書いていき、そして全体をまとめていくと、些細なできごとにもちゃんとドラマがあるということがわかります。それがエッセイなのではないかと私は考えています。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中