最新記事
アメリカ経済

トランプの「製造業ルネサンス」が米製造業を殺す

PROMISES BETTER UNKEPT

2024年11月20日(水)12時26分
カウシク・バス(コーネル大学教授)
ピッツバーグでのトランプ選挙集会

労働者の町、ペンシルバニア州のピッツバーグで支持を訴えたトランプ(11月4日) REUTERS/Jeenah Moon

<この選挙公約だけは守られないで欲しいと、先進国もグローバルサウスも等しく指導者が願う理由は>

アメリカ史上最も荒れ狂った大統領選が終わり、舞い上がった砂塵も収まった今、多くの人が気にしているのは、ドナルド・トランプ次期大統領が公約に掲げた経済政策を実施したら、アメリカと世界にどのような影響が及ぶかだ。

選挙戦中トランプは繰り返し、製造業の雇用を守るため外国からの輸入品に10%、中国製品には最高で60%の関税をかけると主張。外国に生産拠点を置く米企業を課税などで罰し、不法移民を大量に強制送還するほか、外国人がアメリカ人労働者の職を奪わないよう入国を制限すると誓った。


「製造業ルネサンス」とうたわれたトランプのこの構想は魅力的に見えるかもしれない。実際、選挙結果が示すように多くの有権者はそう思った。金融市場もトランプの勝利を好感している。選挙後、ドル相場は上昇。S&P500種の終値も前週比で1年ぶりの上昇率を記録した。

しかし現実はそれほどバラ色ではない。ヒトとモノの流れを制限するトランプの政策に、専門家は厳しい見方をしている。ピーターソン国際経済研究所の最近の報告書はトランプが張り巡らす貿易障壁の影響を検証し、輸入品に関税をかければ物価が上がり、特に低所得層と中間層の家計に重い負担がのしかかると警告した。

関税をかけても物価の上昇は一時的で、その後は落ち着くとの見方もあるだろう。そうであれば、長期的なメリットが短期的なコストを上回る可能性もある。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮兵、ロシア軍の一員として対ウクライナ戦に参加

ビジネス

中国のファンド運用各社、ETFの手数料引き下げ 競

ビジネス

首都圏マンション、10月平均価格は9239万円 前

ワールド

米LA市、移民保護へ「聖域都市」条例可決 トランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 7
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 8
    なぜ今さら長射程ミサイル解禁なのか、ウクライナ戦…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中