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アメリカ経済

トランプの「製造業ルネサンス」が米製造業を殺す

PROMISES BETTER UNKEPT

2024年11月20日(水)12時26分
カウシク・バス(コーネル大学教授)

だがトランプ流の通商政策は米経済に長期的なメリットどころか深刻なダメージを及ぼしかねない。なぜか。輸入品に関税をかければ、困るのは消費者だけではない。当然ながら国内企業の生産コストも上がる。

トランプ流の通商政策には大きな見落としがあるのだ。それは国内の製造業が輸入資材に大きく依存していること。輸入資材が値上がりすれば、米国製品の価格が上がり、米製造業の競争力は低下する。ひいてはトランプの掲げる「外国からの雇用の取り戻し」も絵に描いた餅となりかねない。


加えて、外国にある米企業の生産拠点の国内回帰を促すトランプの政策も裏目に出る可能性がある。例えば、中国に代わる生産拠点として米企業が盛んに工場建設を進めてきたインド。「アメリカの労働者を守る」という名目で米企業の直接投資を規制すれば、打撃を受けるのはインド経済だけではない。米国製品の生産コストも上がる。トランプの政策は競争力の低下ばかりか、広範囲に及ぶ地政学的しわ寄せをもたらし、インドとの防衛協力の強化を目指す米政府の長年の外交努力を帳消しにしかねない。

しかも、外国の安い労働力の利用を制限すれば、他国、特に中国が価格競争で米企業を打ち負かすことになる。アメリカが孤立を深めるなか、中国がアフリカ、アジア、中南米で足場を広げ、世界市場の占有率ばかりか地政学的な影響力も拡大するだろう。

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