世界の若者を苦しめる「完璧主義後遺症」...オードリー・タンは「ジグソーパズル」にたどり着いた
「大人になってから、何をするにも人と比べることはなくなりました。IQ160という数字も、人と比べるためのものではないのです」
自身が喜びを感じるのは、成功して他人に評価されたときではない。さまざまなコミュニティに参加して、仲間と共に一つのテーマを研究し、成果に貢献できた分だけ、自身には価値があると感じられる。そのことを、独学を通して少しずつ悟っていった。
個人ではなく大勢で問題を解決する時代に
私たちがふだん教育について語るとき、「誰かが正しい答えを独占している」と感じがちだ。しかし、私たちが暮らす世界では状況が絶えず変化している。新たに生じた状況は、これまでの知識体系のなかには組み込まれていないため、既知の対処法をそのまま当てはめて処理することはできない。
模範解答も存在せず、検討と議論を重ねて対処していくしかない。私たち一人ひとりが、いわば知識の空白を埋めるジグソーパズルのピースのようなものだ。ジグソーパズルに、自分が1位だとか誰が2位だとかいう競争の概念はない。一つひとつ、つながり合っていくだけだ。
この考え方を知識論に当てはめてみると、私たち一人ひとりの主観や経験こそが、何物にも代えがたい貴重なものだと言える。全員が同じ内容を100パーセント正確に暗記する必要はない。テクノロジーが発展した現代においては、それはコンピューターが代わりにやってくれる。だが、コンピューターには絶えず変化する世の中に対応する能力はない。