習近平は「総書記」と「国家主席」どちらが正しいのか?...中国政治システムの「本音と建前」
キャリア外交官だった秦剛は習近平の抜擢で駐米大使を経て外相になりましたが、共産党でのポジションは中央委員止まり。共産党の序列で言うと政治局員ですらない下っ端です。かたや外相を退いてから共産党の政治局局員になった王毅は、断然格上。
中国の政治においては、政府でのポジションより共産党内のタイトルが重要で、「共産党で偉い人=国でも偉い人」となります。
ちなみに外交の世界はカウンターパートが重要で、同じ序列の人間が会わないなら訪問しない、迎えないという暗黙のルールがあります。
たとえば2023年に米国のブリンケン国務長官が訪中した際、政治局員であるカウンターパートの王毅前外相が出迎えました。習近平総書記との会談もあったのは「米国を重視しています」というメッセージです。
ところが同年、日本の林外務大臣の訪中で対面したのは秦剛外相。ポジションは同じ “外務大臣同士” で、形式的にはカウンターパートになりますが実質的には格下、政治局員の王毅には出迎えられなかった──あの時期の中国にとって、日本はそんな存在だったということかもしれません。
二重構造でわかりにくい中国政治のさらにややこしいところは、政治家と官僚の線引きが曖昧な点です。